559:にゃんこ[saga]
2012/06/14(木) 18:00:37.11 ID:wM9rIEft0
「あ……ず……」
何かを言おうとしたけど、言葉にならなかった。
もう少し、一瞬でも気を抜けば、自分が泣き出してしまうって事だけはよく分かった。
不意に、梓が私の頭に手を置いた。
今までとは逆に、梓が私の頭を撫でてくれて……。
梓の方も涙を堪えながら、それでも言った。
「泣きましょうよ、律先輩も……。
ずっと我慢してた分、泣きましょう……?
泣いたってどうなるわけじゃありませんけど……、
でも、今だけは……一緒……一緒に……」
その言葉が終わるより先に、梓の瞳からまた大きな粒の涙が零れた。
我慢していた分、今までよりずっとずっと大粒の涙だった。
声を上げて、泣き出し始める。
「うわああああああああっ!」
大声で泣く梓。
何の計算も、想いもなく、ただ自分の感情のままに泣いている。
ひたすらに大声で泣いている。
梓の言う通り、泣いたってどうなるわけじゃない。
救われるわけじゃないし、元気になれるわけでもない。
そんな事は私だって分かってる。
でも、涙を堪えてたって、強くなれるわけじゃない。
泣かない事が前に進むって事でもないんだ。
だから、私も今はもう泣こうと思う……。
最後の嘘から、私と梓を解放しよう……。
もう……、嘘は終わりだ……。
溢れ出す涙を、止められない……。
「う……くっ……。
ううううううううううう……っ!
あああああああああああああっ!」
一斉に溢れ出す私の涙。
馬鹿みたいに後から後から溢れ出ては止まらない。
梓と二人で大声で涙を流して、色んな感情を吐き出す。
ロンドンの街が、私達の涙で染まっていく。
でも、それでいいんだって、私は泣きながら思った。
泣く事は弱さかもしれないけど、泣かない事も強さじゃない。
それを梓と話してやっと分かった気がしたから、私は大声で泣くんだ。
今度こそ前に進むために。
未来も過去も現在も、全てを背負って前に進むために。
もう逃げだしたりするもんかって、それだけは強く誓いながら……。
私達はいつまでもいつまでも大声で泣き続けた。
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