過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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565:にゃんこ[saga]
2012/06/17(日) 17:50:36.54 ID:LMLRxZRo0
だけど、そうした所で自分の中の罪悪感から目を逸らせるわけじゃなかった。
何としても和達を忘れようとしない唯達の姿を見て、動揺して、
自分の選択肢を疑って、自分と同じ道を選んだ唯一の仲間に頼る事しか出来なくなった。
だからこそ、私は風呂場の中で梓を求めようとした。
だからこそ、梓は慕っている唯じゃなくて私と自分の手首を結んだんだ。
同じ道を選んだ相手だから、自分を認めてくれるんじゃないかって下心を持って……。

酷い話だと思う。
その方が和達を見捨てた事よりも、和達に対してずっとずっと酷い仕打ちじゃないか。
忘れ去ってしまった方がいいなんて、そんな事が許されるはずがない。
私達が楽に生きるためには、和達の事を忘れた方がよかったんだろう。
それなら、簡単に、気楽に、幸福に生きていける。
私はそんな単純で最低な道を選ぼうとしてた。
結局、逃げようとしてただけだったんだ。

でも、もう……、逃げたくない。
自分の気持ちに嘘を吐きたくないんだ。
苦しくたって、悲しくたって、今度こそ自分の気持ちとまっすぐに向き合おうと思う。
そう思う事が出来たのは、梓も含めた皆のおかげだ。


「あっ、そういえばすみません……!
私、ずっと律先輩に馬乗りになってて……!」


急に梓がそう言って頭を下げると、私の腰の上から身体を退けた。
そのまま身を翻すみたいにして、私の右隣に腰を下ろして肩を並べた。
そういえば、ずっと梓にマウントポジションを取られたままだったな。
我ながら無茶な体勢で泣いてたもんだよ……。
でも、腰が痛くなってるわけでもなかったし、嫌な気分でもなかった。
こう言うのも変なんだけど、身体を重ねて梓の悲しみや震えを感じる事で、
私の悲しみは私だけの物じゃないんだって感じられた気がする。
皆、辛くて、悲しんでて、それでも必死に生きてるんだって。
それこそ実際に梓と肌を重ねて、キスをしたりするよりも、深く感じられたと思う。

私は隣に座る梓の頭に手を置いて、撫でながら言ってやる。


「いいよ、梓。
別に腰とかが痛くなってるわけじゃないから気にすんなって。
それより……、その……、ありがと……な」


梓に感謝したい気持ちは間違いなくあった。
でも、それをどう表現していいのか分からなくて、曖昧な言葉になってしまった。
梓に私のこの想いはちゃんと伝えられたんだろうか?
何故か心臓が鼓動するのを感じながら梓に視線を向けてみると、
梓は妙なジト目を私に向けながら、ちょっと上擦った声を出した。


「ありがとう……って、私、感謝される覚えはないんですけど……。
ま、まさか律先輩、全身を圧迫されて喜ぶような人だったんですか?
趣味は人それぞれですからいいと思いますけど……、
でも、私にはちょっとそういう趣味は無くて……、ぷっ」


「何の話をしてるんだ、中野ー!」


鼻で笑われてしまった私はつい反射的に梓の首に手を回していた。
私の得意技のチョークスリーパーの体勢だ。
よし、このまま締め上げて……。


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