過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
567:にゃんこ[saga]
2012/06/17(日) 17:53:02.11 ID:LMLRxZRo0
腕の中の梓と至近距離で視線が合う。
流石に気障過ぎたと思ったのか、梓がまた頬を赤く染めた。
一つ咳払いをすると、普段通り、
でも、凄く久し振りに生意気な口調になった。


「大体、律先輩は普段大雑把なのに、妙な所で気を遣い過ぎなんですよ!」


「えー、何だよ、いきなりー!」


「思い出してみて下さいよ、律先輩。
私が日焼けしてから、律先輩、私にどれくらいくっ付きました?
私にプロレス技を掛けなくなって、どれくらい経つと思ってるんです?」


「いや……、えっと……、どれくらいだったっけ……?」


そういやどれくらいだっただろう。
私は頭を捻って遠い過去に思いを馳せてみる。
言われてみれば、梓が日焼けをしてから、全然プロレス技を掛けた覚えが無い。
確か憂ちゃんにマッサージをしてもらってて、
そのついでに梓もしてもらえ、って話になった時、
いや、日焼けしてるからマッサージは痛いよな、
私も梓に触らないように気を付けるよ、ってな話をして以来、
代わりにツインテール両側引っ張りや、頭クルクルをするようになったはずだ。
確かに最近は梓にプロレス技を全然掛けてなかった気がするな。

「でも、それは……」と私が弁明しようとすると、梓が頬を膨らませて首を横に振った。
弁明なんて聞きたくありません! って事なんだろう。
申し開きもさせてもらえないのかよ……。
何となく釈然としない気分だ。
その私の様子に気付いたのか、梓が急に寂しそうな表情になって続けた。


「私の事を考えてくれてるのは、勿論嬉しいですよ?
でも、律先輩ったら、いつも極端なんですよ。
これまで普通にやられてた事を、急にやめられてしまった方の身にもなって下さい……。
日焼けが原因だって分かってても、他に何かあったんじゃないかって思ってしまうじゃないですか。
私が何か至らなかったのかも、って思ってしまうじゃないですか……」


「いや……、梓が至らないなんて、そんな事あるわけないじゃんか。
私は梓を傷付けたくなかっただけなんだよ……。
日焼けの痛みは昔色々あってこの身でよく知ってたからさ、それで……」


「いえ、すみません、律先輩……。
分かっているんです。律先輩が優しい人なんだって事は……。
分かってますけど……、私、寂しかった……。寂しかったんです……。
気を遣われる事って……、すっごく寂しくて、私……」


その言葉の最後の方は掠れてしまっていた。
もしかしたら、また泣き出しそうになってしまっているのかもしれない。
私は……、そういう所でも梓に寂しい気持ちにさせてしまっていたのか……。
梓の事を想ってした事のはずなのに、誰かのためにってのは難しい事なんだな……。
そう考えて、私が頭を下げて謝ろうとした瞬間、不意に梓が微笑んだ。
梓が滅多に見せない悪戯っぽい微笑みだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice