過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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569:にゃんこ[saga]
2012/06/17(日) 17:58:46.92 ID:LMLRxZRo0
「どれだけ私が日焼けしやすいタイプだって思ってるんでしょうか……」


「だよなー……」


梓が呟き、そうして二人して苦笑する。
梓が日焼けしやすい体質なのは確かだけど、こんな肌寒い気候でまで日焼けするほどじゃない。
言っちゃ悪いが、こりゃいくら何でも設定ミスだ。
唯の中で梓がどれだけ日焼けキャラとして確立してるってんだ……。
まあ、その辺は唯自身にもコントロール出来ない事なんだろうけどさ。
私は肩を落とす梓の頭に手を置いて、ちょっと笑いながら言ってやる。


「その辺、唯に文句言ってやらないとな」


「ええ、後でしっかり文句を言います。
日焼けって痛いんですからねって、思いっきり文句を言いたいです。
勿論、この世界を夢見てる唯先輩に……」


ああ、と私は頷いた。
やっぱりそれが一番いいんだろうな、って思った。
この世界を夢見てる唯ってのは、この世界に居る唯の事じゃない。
元の世界……、病室で眠り続けてる唯の事だ。
両方唯ではあるけれど、何も分からずに自分の力に振り回されてるこの世界の唯よりは、
無意識にこの世界を創り上げてる元の世界の唯の方に文句を言ってやる方が道理っちゃ道理だよな。
梓はそれを……、元の世界に戻る事を選んだんだ。
私は静かにそれを訊ねてみる。


「……いいんだな、梓?」


「はい、私……、思ったんです。
何度も忘れようとしました。思い出す度、何度も辛くなりました。
でも、やっぱり私、純達の事、忘れられなくて……、忘れたくなくて……。
もう一度、会いたいんですよ、やっぱり……。
この世界じゃなくて、元の世界で……、もう一度三人と話をしたいんです。
いいえ、三人以外の皆とも……。
律先輩は反対するかもしれませんけど、でも……」


「反対なんか、しないよ。
言っただろ? 私はおまえの笑顔が好きなんだよ。
それでさ、おまえが一番の笑顔で居られるのは、皆と笑ってられる時だと思うんだ。
純ちゃんがおまえをからかって、憂ちゃんが見守ってくれて、
和がよく分からない突っ込みをして、さわちゃんがまた変な事を言い出して、
わかばガールズの残り二人がそれを見つめてて……。
そんな時に浮かべる笑顔が、きっとおまえの最高の笑顔なんだよ。
それは元の世界じゃないと出来ない事なんだ。
だから、私はおまえが元の世界に戻りたいって思う事に、反対なんかしないよ」


「あの……、律……先輩……も」


梓がそこまで言って口を噤んだ。
ちょっと恥ずかしい事だけど、私の言葉をまっすぐ受け止めてくれたんだろうと思う。
私にはそれが凄く嬉しかった。
梓は本当の笑顔を取り戻すために行動しようと思ってくれたんだから。
梓に負けないよう私も笑って、その梓の頭を撫でながら言葉を続けた。


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