過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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582:にゃんこ[saga]
2012/06/20(水) 17:59:10.84 ID:WKz3Fjby0
梓が笑顔のまま、目元の涙を拭いながら続ける。
涙の理由は笑い過ぎたからなのか、悲しかったからなのか、それは今は訊かなくてもいい事だ。


「さっき、本当の気持ちって言いましたけど、
私が律先輩の事を恋愛対象として好きな可能性は少ないですよ?
あったとしても少しだけだと思います。
だから……、後悔しちゃ駄目ですよ、律先輩?
私と恋人になれる可能性が高かったのは、さっき私が迷ってた時だったんですからね?
冷静な私が律先輩に恋するなんて思います?」


「ひっでー言い方だなあ、おい……。
でも、ま、いいよ。許してしんぜようぞ、梓。
私が本当におまえに恋してるって気付いて、
おまえが私を受け入れてくれなかったら一人でシクシク泣くさ。
だけど、後悔はしないぞ?
弱ってる子の気持ちを利用して付き合うとか私の性に合わないからな!」


「そう言うと思いました」


梓が言ってから、二人で顔を合わせて大きな声で笑う。
空を見上げてつい自嘲する。
あーあ……、損な生き方だよなあ、私達。
不器用で、変な所で真面目で、似た者同士で……。
だけど、後悔は無い。二人とも、後悔なんて無い。
これが私達の嘘の無い生き方なんだから……。

不意に笑顔のままで梓が私に手を差し出した。


「見つけましょう、私達の気持ち。
そのためにも、これから私達に出来る限りの……」


私は差し出された梓の手と握手する。
先輩と後輩としてでなく、支える側と支えられる側としてでもなく、
対等な……同じものを目指す仲間として、想いを伝え合うために。


「ああ、出来る限りのライブをやってやろうぜ!」


まずはそれから。
新しい道を歩いていくための一歩。
そのための握手。そのためのライブだ。
これが私達の新しい始まり。
それが悲劇になるとしても、喜劇になるとしても、
とにかく私達の新しい物語は幕をこうして開けたんだ。
それだけは確かに嬉しかった。
いつかは忘れる運命にあるとしても、この想いだけは心に残しておきたい。


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