584:にゃんこ[saga]
2012/06/20(水) 18:00:05.33 ID:WKz3Fjby0
いや、服の話だけどな。
唯に回収されたはずの服どころか、着替えの服すら置かれていなかった。
着替えの服くらい用意してくれてると思ったんだが……。
しかも、何処に行ったのか、唯達の姿すら見えない。
あいつら、私達にどういう罠を仕掛けたんだよ……。
仕方ないから私達はバスタオルを身体に巻いて部屋の探索を始める。
下着と服はすぐに見つかった。
と言うか、ベッドの上に二着置いてあった。
いや、置いてあったのはいいんだけど、その服は非常に不可思議な形状をしていた。
さわちゃんが縫いそうな奇妙な服ってわけじゃない。
ただ、何と言うか……、超ヒラヒラだった。
水色のヒラヒラのワンピースで、例えるなら赤毛のアンが着るみたいな服だった。
……これを私に着ろって事か?
私がこの服に袖を通した姿をちょっとだけ想像してみる。
………。
……。
…。
無い無い無い!
超無いし! 超おかしーし!
こんな服を着た日にゃ、一生、唯か澪に馬鹿にされ続けるわ!
とんでもない罠だ!
ムギは褒めてくれるかもしれないけど、それはそれで何か嫌だ……。
肩を落としながら梓に視線を向けてみると、梓もげっそりとした表情を浮かべていた。
流石に梓もこの衣装は嫌らしい……。
そういや、梓もそんなに女の子っぽい恰好をするタイプじゃないしな……。
私達の中では比較的スカートを穿く奴ではあるんだけどさ。
私と梓はその服をベッドに置くと、他の服を捜してみる。
確かベッドの横にまとめて畳んでたはずだったんだが……、やっぱり無かった。
この調子だと隣の部屋にでも全部隠してるんだろう。
私は溜息を吐きながら、部屋と部屋を繋ぐ扉のノブに手を掛けた。
この部屋に居ない以上、唯達は多分隣の部屋に隠れてるはずだ。
意外にも扉に鍵は掛けられてなかった。
呆気なく開いた扉の先には、意外な光景が広がっていた。
「……何やってるんだ、おまえら」
私は思わず小さく呟いてしまった。
後ろから身を乗り出して扉の先を確認した梓も微妙な顔をしていた。
それもそのはず。
ベッドに置いてあったのと同じワンピースを既に唯達三人が着ていたからだ。
準備がいいと言うか何と言うか……。
こいつら、自分達が着替えるためにも私達を風呂場に追いやったわけか……。
しかも、三人とも普段とは全然違う髪型をしていた。
ムギが襟足で二つ結びにしていて、澪も珍しい三つ編みにしてる。
そして、普段とは一番変わってる髪型にしてるのは唯だった。
私とそう長さが変わらない髪のくせして、無理矢理左右両側で三つ編みを結んでる。
しかも、眼鏡まで掛けてるとか、一体これは何なんだ……。
でも、ちょっと安心もしていた。
眼鏡こそ掛けてるけど、その唯が掛けた眼鏡は和と同じ眼鏡じゃなかった。
掛けていたのは太い黒縁の眼鏡。
田舎臭いと言うか古臭いけど、その唯の髪型にはよく似合っていた。
「何だよ、律。まだ着替えてないのか?」
そう言ったのは澪だ。
こいつ……、さわちゃんの衣装を着る時は一番嫌がるくせに……。
こんなの着られるか!
と言おうかと思ったけど、やめた。
澪の奴、さわちゃんの衣装は嫌がるくせに、
こういう女の子女の子した服を着るのには抵抗の無い奴なんだよな……。
昔、ヒラヒラを私に着せようとした事も何度かあったしな……。
こいつには何を言っても無駄だろう。
ムギ……も駄目だな。
強要したりはしないはずだけど、褒め殺しで説得されちゃう気がする……。
だとすると、唯か……。
あんまり説得出来る気もしないけど、他に可能性も無いし、頑張ってみる事にしよう。
私はずれ落ちそうになるバスタオルを押さえながら唯に言ってやる。
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