595:にゃんこ[saga]
2012/06/22(金) 18:13:08.00 ID:dCovMAmZ0
「で、その再配置が何だって言うんだよ?」
「詳しい説明は省くけどさ、要は弱点を補うために別の所が成長するって事かな。
律には漫画的な説明の方が分かりやすいかもしれないな。
たまに見かけると思うけど、盲目の武術の達人を連想してもらえれば分かりやすいと思う。
律がよく読む漫画にはそんな登場人物って結構出て来るだろ?」
「いや……、そんなに格闘漫画ばっかり読んでるわけじゃないんだが……。
でも、まあ、確かに居るな。
うん、思い出してみただけで、結構居るよ、盲目の武術の達人」
「だろ?
実はあれには科学的な根拠もあるらしいんだ。
視覚を失う事で、元々視覚のために使っていた脳を、
聴覚とか嗅覚とか別の機能に使えるようになる事もあるらしいんだよ。
それが脳の再配置……、ここまでは分かってくれたか?」
「まあ、何となく……。
つまり、失った何かを補うために、一点集中で違う何かを伸ばすって事……でいいのか?」
「大体、そう考えてもらって間違いないかな。
さっきも言ったけど、サヴァン能力もその脳の再配置が原因らしい。
会話をする能力が無い代わりに天才的な音楽の才能を持ったり、
数字の計算が出来ない代わりに写実的で完璧な絵画を描けるようになったり……、
とにかくそれがサヴァン能力なんだよ。
……何かに似てると思わないか?」
「ひょっとして……」
澪の問い掛けに、ムギが神妙な表情で呟いた。
ムギが呟いてくれたおかげで、私もムギが何を言いたいのか気付けた。
私達の中で一番、私達の怪我の事を憶えているムギ。
そのムギが誰よりも先に気付くって事は……。
躊躇いながら、ムギが言葉を続ける
「唯ちゃんの……、頭の大怪我……?」
何処か悲しそうなムギに向けて、「ああ」と澪は頷いた。
澪も少し悲しそうだったけど、それでも言葉を続けてくれた。
「まだはっきりと思い出せてるわけじゃない。
でも、元の世界では、確か唯は頭に大怪我を負って、その日から眠り続けるようになった。
植物状態ってわけじゃないけど、何故か目を覚まさなくなったはずだ。
多分、脳の何処かに障害が出たんだと思う。
それで目を覚ます事が難しくなったんだ……」
「……唯が目を覚まさなかったのは、私も何となく憶えてるよ、澪。
でも、それとこの世界に何の関係があるって言うんだ……?」
私が訊ねると、澪は少し溜息を吐いた。
どうやらそこから先の推論には自信が無いみたいだ。
それでも、澪は私の瞳を見つめて言ってくれた。
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