過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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605:にゃんこ[saga]
2012/06/24(日) 17:46:39.03 ID:zgF1iagU0
「何かよく分からないんだけど、頭蓋骨に穴を空けて風通しをよくしたら、
脳にその風の影響があって、変な能力が目覚める事があるんだってさ。
その漫画じゃ他人が皆変な生き物みたいに見えるようになってたんだけど……。
まあ、それはともかく、つまりトレパネーションってのは、
人工的に脳の再配置を行わせるための手術だったんだなって、そう思っただけだよ。
ほら、もう話終わったから、耳を塞いでなくて大丈夫だぞ、澪」


私は自分の腕に力を込めて、澪の手を膝の上に戻らせる。
澪はまだ泣きそうな顔をしながら、まだまだ不安そうな声色で呟いた。


「……本当?」


「嘘吐いてどうするんだっての。
単に私が前読んだ漫画の話を例えに話してみただけだよ。
ほら、私の家にあったろ?
春子に借りてそのままにしてたら、おまえが開いてすぐに閉じたあの漫画の話だよ。
まあ、絵柄が怖かったから、すぐに閉じたんだろうけどさ」


「漫画……?」


「そうだ、漫画だ。
漫画の話なんだから、そんなに怖がる必要なんてないんだっつーの。
おまえもさ、ホラー映画は勘弁してやるとしても、
いい加減、ホラーチックな漫画くらいは読めるようになろうぜ……」


私がちょっと呆れて言ってやると、何故か澪が少しだけ笑った。
笑える事は言ってなかったはずなんだが……。
私が首を捻って唯達と顔を見合わせてみたけど、皆も不思議そうな顔を浮かべてるみたいだった。
仕方が無いから、とりあえず澪に訊ねてみる事にする。


「どうしたんだよ、澪?
私、何か面白い事言ったっけか?」


「いや……、そうじゃないんだけどさ……。
今、律が漫画の話を例にしたんだろ?
実はさ……、私も同じなんだよ。
私の方は漫画じゃなくて小説なんだけど、
結局、私はその小説で得た知識で、この世界についての仮説を組み立ててみただけなんだよな。
自分で言うのも何なんだけどさ……、ベタな設定だと思わないか?」


話し終わると、また澪が一人で小さく笑い出した。
よっぽど笑いのツボにはまってしまったんだろう。
でも、確かに澪の言う通りだよなー……。
ベタだ。確かにすっげーベタだ。
生き物が存在しない世界の正体……、それは皆が見ていた夢だった!
なんて、手垢が付き過ぎてて、今更小説で取り上げる気も起きない題材だよ……。
宇宙人とか異世界とか三途の川とか電脳世界とか終末の後とか、
ああでもないこうでもないと色々悩んじゃってた私達が馬鹿みたいだ。


「ホントですよね」


「ベタベタだよね」


澪の言葉に続いて、梓とムギが呟いてから苦笑を始める。
澪の仮定を馬鹿にしてるわけじゃない。
唯だけ皆がどうして苦笑してるのか分かってないみたいで、複雑な表情で首を捻っていた。
私も苦笑して、唯の首に腕を回しながら丁寧に説明してやる。


「ホントにベタな設定に付き合わせてくれたもんだなー、唯」


「ええぅっ? 私っ?」


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