614:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:28:57.27 ID:1YUM5IIB0
信じよう、と思った。
実は私が梓の想いを受け入れられなかったのは、もう一つだけ理由がある。
それには気付いてるだろうけど、梓もそれについては触れなかった。
触れるべき事なのかどうかは、私にも分からなかった。
私が梓を抱き締められなかったもう一つの理由……。
それはこの夢の世界から目覚められた後の話だ。
きっと私達はいつか目覚められる。
どんな形であれ、和達みたいに元の世界に戻る事が出来るだろう。
重要なのは元の世界に戻った後での話だ。
私は思うんだ。
元の世界に戻った時、私達はこの夢の世界での事を憶えてるんだろうかって。
この世界は唯……というか、私達全員が同時に見ている夢だ。
夢の世界での出来事なんだ。
今は勿論、鮮明に憶えてるし、自分の意志で色んな事を考えられる。
だけど、その記憶や想いがどうなるのかは、目覚めてみるまで分からない。
この世界で考えた事や思い出が、何もかも無かった事になっちゃうかもしれない。
むしろその可能性の方が高いんじゃないかなって思う。
そんな状態で、梓と恋人みたいな関係になる事なんて出来なかった。
例えばそれは、いくらでもやり直せるからって、
気に入らない展開になったゲームをロードして再開するみたいなものだった。
この世界で梓と恋人になって慰め合って、
目覚めた後で何も憶えてないなんて悲しいじゃないか。
私の想いも、梓の想いも、何もかも無駄になっちゃうじゃないか。
それ以上に、無かった事に出来るかもしれないって現状に甘えたくなかった。
無かった事に出来るから、とりあえず梓を抱き締めておくなんて事は、絶対にしたくなかった。
だからこそ、梓と恋人になるにしろ、元の先輩後輩に戻るにしろ、それは目覚めた後での話にしたいんだ。
私は一度きりの人生を生きてるし、一度きりの人生を生きてたい。
ゲームみたいにやり直せる人生なんて、自分にも梓にも失礼で残酷でしかないから。
だから、きっと梓も「忘れないで」と言ったんだろう、と思う。
この世界での出来事が夢みたいに消えてしまうかもしれないから……。
でも、信じる。未来ってやつを信じてみせる。
全部は無理にしたって、私達は少しでもこの世界での出来事を憶えてられるはずだって。
確かにあったこの時間、この想いを憶えててやるんだって。
絶対に……。
「うわあああああああああああっ!」
いつの間にか私は走りながら大きな声で叫んでいた。
それは不安や恐怖からの叫びでもあったけれど、未来に対する決意からの叫びでもあった。
忘れたくない。忘れてやらない。
私はこの世界での想いや記憶、皆との思い出、梓がぶつけてくれた想いを忘れない。
そして、絶対に唯と一緒に元の世界に戻るんだ……!
その意志を込めて、私は大声で叫んだ。
気付けば、私に倣って唯達も大きな声で叫んでいた。
世界に向けて、皆に向けて、自分に向けて。
きっと多くの不安を抱えながら、だけど、私も含めた全員が笑顔で。
未来を信じるために、私達は叫びながら走ってやった。
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