616:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:33:32.49 ID:1YUM5IIB0
「実はさ、本当は私達も練習したかったけど、
それは梓達に卑怯だと思ったから、楽器だけ集めて練習してなかったんだ。
今の私達の実力をそのまま曲にしたかったからさ。
そんな事で上手く演奏出来るわけないし、下手でいいんだって思うんだよ。
鈍っちゃった自分達の実力を再確認して、
自分達の無力さを知って、それからやっと前に進んでいけると思えるんだ。
だから、ぶっつけ本番でライブをやろうよ、梓。
そりゃ……、私だって鈍っちゃった自分の演奏を聴かれるのは恥ずかしいけどさ……」
「お願い、梓ちゃん!
私の我儘で悪いとは思うんだけど、やっぱり私も唯ちゃん達と同意見なの。
だから……、練習より先に皆でライブをやらせてもらっていい……?」
ムギが両手を胸の前で合わせて梓に頭を下げる。
皆、真剣だった。真剣な表情と想いで、未来に進もうとしてた。
梓もそれが分かったのか、軽く微笑んでから唯の胸の中で頷いて言った。
「……分かりました!
私、自信ありませんけど……、皆さんも同じ気持ちなんですよね……。
それでも、今の自分達に出来る演奏をしたいって気持ち、私にも分かります……。
私も、今の実力を知って、それからまた努力を始めたいです……!」
「ありがとう、あずにゃんー!」
唯がまたつよく梓を抱き締めて、澪達も嬉しそうに梓の頭を撫でていた。
それはとてもいい事だったんだけど、何となく疎外感が胸に湧いたから訊ねてみた。
「……ちなみに私の意見については誰も訊かないのかね?」
何故か数秒の沈黙。
どうしてそこで黙るんだよ……。
しばらく後、梓が唯から身体を離すと、肩を竦めながら生意気に答えてくれおった。
「律先輩は練習してもあんまり変わらないんじゃないですか?」
「中野アズスンアズー!」
一気に梓との距離を詰めて、得意のチョークスリーパーを食らわせてやる。
もう遠慮はしない。
遠慮はお互いのためにもならないはずだし、本気で嫌なら梓も言ってくれるだろう。
こういうのが私達の関係でいいはずだ。
不意に見回してみると、澪達が微笑みながら私達を見つめている事に気付いた。
そういや、澪達の前で梓にチョークを食らわせるのは、久し振りだったかもしれない。
多分、私達の様子を懐かしく思ってるんだと思う。
優しい視線を私達に向けてくれていた。
でも、澪達はすぐに苦笑を浮かべたままで、自分達の楽器に向かって歩いていった。
早くライブを始めたい気持ちもあるんだろうな。
練習云々はともかく、私だって同じ気持ちだった。
そう思って私が梓から身体を離そうとすると、
梓が首に回された私の腕を強く握って、私以外の誰にも聞こえないくらいの声で囁いた。
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