過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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617:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:35:03.37 ID:1YUM5IIB0
「律先輩、あの……、私……。
歌いたい曲が……あって……」


その言葉だけで梓が何を言いたいのか分かった。
ほうかごガールズのメンバーとして、それを分かってやらないわけにはいかなかった。
『演奏したい』じゃなくて、「歌いたい」って梓は言ったんだ。
つまり、それは……。

私は軽く梓の頭を撫でてから、
腕を頭上に掲げて、皆に宣言するみたいに声を大きくして言ってやった。


「おーい、皆ー!
ぶっつけ本番って事は、どの曲を演奏してもいいって事だよなー?
って事は、部長権限で私に演奏する曲決めさせてもらってもいいよなー?」


「えー……。いきなり何言ってんのさ、りっちゃん元部長ー……」


唯がちょっと不満そうに言ったけど、その目は笑っていた。
唯としても演奏出来さえすれば、曲目はどれでもいいと思ってるんだろう。
わざとらしく勿体ぶってから、ちょっと後に唯が折れてくれた。


「まあ、いいかあ……。
それで何を演奏するつもりなの?
ひょっとして『冬の日』とか?」


「何でもいいけど、どうしてそこで『冬の日』が出て来るんだ?」


「え? だって、今のロンドン、二月みたいだから……」


「それだけかよ!
まあ、演奏する直前で私が伝えてやるから、その辺もお楽しみって事で。
それが真のぶっつけ本番ってやつだぜ!」


「うーん、合ってるような合ってないような……。
私はいいけど、ムギちゃん達もそれでいい?」


唯が訊ねると、ムギと澪は苦笑しながら頷いてくれた。
悔しいけど、私の突拍子も無い発言には慣れてるって事なんだろう。
ちょっと悔しいけど、別にそれでもよかった。
それにこの様子なら、まさかあの曲を選ぶとは思いもしないだろうな。
びっくりさせてやれそうで、何だかちょっと楽しくなる。

私は梓から身体を離して、肩を少し押してやる。
梓は少し駆け出した後、振り返って軽く頭を下げて、ムスタングに向かって行った。
私に気を遣わせてしまったって思ってるんだろう。
でも、梓が気にする必要は無い。
ずっと梓に支えられて来た私なんだ。
元部長の私にだって、たまには梓を支えさせてほしい。


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