619:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:38:07.32 ID:1YUM5IIB0
「使って……いいんだよね……?」
唯が嬉しそうな顔で私に訊ねる。
唯だけこのピックの存在に驚いてない。
当然だった。
このピックは風呂上り、唯が私の白い帽子の中に入れて渡してくれたものだからな。
ただ、私がピックをどう使うかだけは唯も考えてなかったらしい。
単に私を勇気付けるためだけに渡してくれた物のはずだった。
だから、唯はこんなに嬉しそうな顔を浮かべているんだろう。
私の中に過去と向き合う決心が出来たから……。
私は頷いてから、唯のその手を軽く握って想いを伝える。
「ああ……、いや、違うか。
使っていい……じゃなくて、おまえに使ってほしいんだ。
おまえに渡したのは憂ちゃんに渡そうと思ってたピックだよ。
憂ちゃんの分も、おまえに演奏してほしいんだ。
元の世界に居る憂ちゃん達に届けられるくらいにさ……!」
「うん……っ!」
唯が満面の笑顔で頷き、力強く返事をしてくれた。
そういう事なら……、と澪が唯の後に続く。
「私だって純ちゃんに届けるよ、律。
純ちゃんとはまだそんなに親しくなれたわけじゃないけど、
私だって純ちゃんの事は好きだし、すごく大切に思ってるよ。
私にそんな資格があるのかどうかは分からないけど、
純ちゃんに憧れられた先輩として、憧れるに値する演奏をしたいって思う。
……私だけじゃなく、律だって精一杯演奏しろよな?」
「当然よ!」
言ってから、私は澪とハイタッチを交わした。
私の大切な幼馴染みの澪。
澪がギリギリで引き止めてくれたおかげで、私も今ここに居られる。
憧れとは違うかもしれないけど、
私も澪が好きで居てくれた強い私を澪に見せてやりたいと思う。
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