過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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620:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:38:34.74 ID:1YUM5IIB0
「梓」


私はまだ驚いた表情を浮かべてる梓に向けて、言葉を掛けた。
梓は躊躇いがちに私に視線を向けてくれた。


「律……先輩……」


梓が小さく呟く。
過去に向き合う私の姿に驚いてるってわけじゃなく、
私の出した一つの答えを受け止め切れてないのかもしれない。
私だって確かな答えを出せてるわけじゃないけど、これだけは伝えておきたかったんだ。


「梓、おまえに渡したピックは勿論、おまえのピックだ。
でも、私達の新バンドの思い出のピックでもある。
今でも和達の事を考えると辛いし、怖いし、謝りたくなる……。
だけどな、その過去を私は忘れたくないんだ。
また和達と会って、話をしたいし、悲しさや辛さも憶えていたいんだ。
これまでの事だけじゃないし、
これからの事も、勿論、おまえとの事だって……。

だから、そのピックで過去も未来も今も抱えて、演奏してやってほしいんだ。
私だって、演奏してみせる。忘れたくないし、憶えててみせる。
その後の事は元の世界で……、おまえとの事も元の世界で、きっと……!」


その言葉で全部の想いが伝わったとは思ってない。
完全には伝えられてないんだろうと思う。
でも、ほんの少しでも私の想いが伝わっていればとても嬉しい。
梓は私の手渡したピックを強く握ってから……、


「はいっ! よろしくお願いします、律先輩!」


満面の笑顔を浮かべて、言ってくれた。
今はそれだけで十分だ。

そうして、私達は始める。
長く回り道をして来た私達の、最初の第一歩を刻むライブを。


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