過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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624:にゃんこ[saga]
2012/06/27(水) 18:44:59.75 ID:1YUM5IIB0





転調。
『天使にふれたよ!』を演奏し終わった瞬間、
誰からというわけでもなく、全員が同時に一つの曲を演奏し始めていた。
示し合わせたわけじゃないし、その予兆があったわけでもない。
ただ皆が皆、その曲を演奏したいって考えてたんだと思う。

届けたかったんだ。
私達の演奏を。
私達の想いを。
私達だけじゃなく、元の世界に居るはずの皆にも。

皆で同時に演奏を始めたのは『U&I』。
唯が風邪で寝込んでいた憂ちゃんに向けて作詞した曲。
大切な妹に贈る、唯の想いを歌に込めた曲だ。
自分で作詞しただけあって、相当な思い入れがあるんだろう。
とても真剣な表情で、唯がギターを弾きながら大きな声で歌い始めていた。
いい曲、いい歌声だと思った。

だけど、憂ちゃんにはちょっと悪いけど、
私は憂ちゃんのためだけに『U&I』を演奏してるわけじゃなかった。
憂ちゃんに対する想いも勿論込められてる。
でも、それだけじゃない。
和に、純ちゃんに、聡に、家族に、さわちゃんに……。
多くの人への想いを込めて、精一杯に演奏する。
『私』から多くの大切な『君』に向けて、想いをドラムに叩き付ける。
傍に居るのが当たり前だと思っていた皆に向けて、
今まで傍に居てくれた感謝を込めて、
もう一度再会するって決心を込めて、皆の想いを込めて演奏し続ける。

気が付けば、唯の瞳から涙が流れていた。
でも、その歌声は止まらない。
唯の想いは涙に負けない。
涙なんかに言葉や願いを止めさせない。
強い想いを込めて、唯は涙を流しながらも歌い続ける。

いつの間にか私も顔に熱い物が流れてる事に気付いていた。
とめどなく流れる熱い涙が私の涙腺から溢れ出す。
私だけじゃない。
隣に居るムギも泣いていたし、その背中を見ただけで澪や梓が涙を流してる事が分かった。
それでも、皆、演奏を止めない。止めてやらない。
涙なんかに私達の想いを邪魔させるわけにはいかないんだ。

不意にムギが震える声で歌声を唯の歌声を重ね始めた。
二人の声が響き、重なり、決心を強くしていく。
必ず元の世界に戻って、今の気持ちを皆に伝えてみせるんだって。
今は遠い世界に居たって、必ず再会してみせるんだって。
そう誓う。

曲も中盤に差し掛かった頃、澪が唯の使うスタンドマイクに顔を寄せた。
二人で顔を並べて、一つのマイクに想いをぶつける。
泣き虫な澪、泣き虫な唯が、涙に負けずに歌う。
歌う。
想いを言葉に変え、世界に響かせる。
世界に、自分に、皆に、想いを届けてみせるために。


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