636:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:55:54.56 ID:zmR1v/Ro0
「ごめんね、皆……。
私のせいでこんなに大変な事になっちゃって……。
でも……、でもね……、私、もう逃げないよ?
自分が死んだら皆が助かるなんて、そんな事も考えない。
元の世界で皆で居られる方法を頑張って探すから……、
我儘だと思うけど、それまで皆には笑顔で居てほしいんだよね……。
私も笑ってるから……、笑顔で頑張るから……。
それまで皆には迷惑掛けちゃうけど、ごめんね……」
「それは言わない約束でしょ、おとっつぁん!」
唯の言葉に急にそう返したのはムギだった。
唯が望んだ優しい笑顔で……、
いや、きっとムギ自身がそうしたいと望んだ笑顔で。
唯の笑顔がムギを笑顔にして、皆を笑顔にしていく。
それが私達の関係で、とても落ち着けて嬉しい。
遠く離れていても、その笑顔を浮かべられるようになれればって思う。
ただ唯はちょっと呆然としていた。
ムギの笑顔と言うより、単にムギのボケに驚いてるだけみたいだった。
確かに私も結構驚いた。
これは確か唯が知恵熱(?)で寝込んでいた時に私がムギに教えたネタだった。
いつの間にか使い所を完全に習得してるみたいだ。
きっと私達の知らない所で場を和ませるために練習してたんだろう。
ムギの中に……、私のネタがある。ムギの中に私が居るんだ……。
当たり前の事のはずなのに、私にはそれが凄く嬉しくなった。
「ムギちゃんがボケた……」
まだムギのボケを受け止め切れないのか、唯が小さな声で呟いている。
そんなに衝撃的だったのか……。
まあ、確かにムギがボケたのは澪か私相手くらいで、
唯に向けてボケた事はそう無かったから驚いたのかもしれないな。
いや、唯がムギのボケをボケとして受け取ってなかっただけか?
唯の奴、私の渾身のボケを素で流す事あるもんな……。
澪がそんな唯の姿に呆れたのか、
肩を竦めて軽く笑ってから、唯の肩に手を置いた。
「変な顔をしてるなよ、唯。
ムギだってボケる事くらいあるよ。
それにさ……、謝る必要なんて無いよ、唯。
おまえが我儘だって言うんなら、私達だって我儘なんだ。
おまえの夢の中に来た上に、今度はおまえを元の世界に連れ戻そうとしてるんだからな。
こんなの我儘以外の何物でも無いよな。
でも、私はその我儘を貫きたいんだ。
やっぱり唯達とまたライブしたいし、おまえと和達をもう一度会わせてあげたいしさ。
皆でもっと我儘になろう、唯。
私達はそれを望んでるよ。
それでも私達に悪いって思うんなら、一日でも早く自分の力の使いこなし方を憶えてくれ。
ライブ前にも言ったけど、おまえがその能力を生かせれば、
元の世界に戻る事も決して難しくないはずだって思うんだ。
それ以外で私達に悪いって思う必要は無いんだ。
だから、頑張ってくれよな、唯?」
「澪ちゃん……」
「そうですよ、唯先輩!」
熱心な表情を浮かべて続けたのは梓だ。
赤毛のアンみたいな衣装に似合わず、熱さまで感じる。
それくらい唯を大切に思ってるんだって事がよく分かった。
梓は唯の前に立つと、手を差し伸べて握らせて唯をその場に立たせた。
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