64:にゃんこ[saga]
2012/01/28(土) 14:40:22.57 ID:5EkQnNsE0
「え……? 私……?」
私は思わず呟いてしまう。
純ちゃんは私の言葉に頷くと、近付いて来て私の手のひらを握った。
「はい! 実は律先輩に見てほしい物があるんです。
昨日学校で見つけて、その時は大した物じゃないって思ってたんですけど、
一晩寝てよく考えたら、やっぱり大変な物なんじゃないかって思えてきて……。
だから、律先輩、今から一緒にそれを見に行ってもらえませんか?」
「それなら、私じゃなくて……」
和の方がいいんじゃないか。
そう言おうとしたけど、その言葉は途中で止めた。
大変な物かもしれない得体の知れない何か……。
それを一番正しく判断出来るのは、きっと私達の中では和だけだ。
そんな事なんて、純ちゃんだって分かり切ってるだろう。
でも、純ちゃんは和じゃなくて、私を選んだ。
和じゃなくて、私に見てもらった方がいい物だって思ったから、私を選んだんだ。
だったら、私が行くしかないじゃないか。
和もそれを分かってるんだろう。
私が軽く視線を向けてみると、和は軽く頷いてくれた。
いってらっしゃい、とその視線は言っていた。
「分かった。
それが何なのかは分からないけど、今から一緒に行くよ。
連れてってくれるか?」
「ありがとうございます、律先輩!
じゃあ、すぐそこなんで私についてきて下さい。
和先輩、すみません、律先輩を借りていきます。
ほら、梓も一緒に行くよ!」
「何なのよ、もー……!」
肩を落として呟く梓を楽しそうに見つめながら、
純ちゃんが私の手を引いて屋上の扉に向けて駆け出し始める。
純ちゃんに手を引かれ、私もその場から走り出す。
結局、屋上で見つけられた答えなんて、ほとんど無かった。
でも、今は走り出す。
今は走るべき時なんだ。
走り出していい時なんだって思った。
梓の近くまで駆け寄る。
私は梓の手を取って、純ちゃんと梓と一緒に走り出そうとする。
瞬間、和が私達の後ろから大きな声で言ってくれた。
「律! 朝ごはん作ってくれたの律でしょ?
美味しかったわよ、ありがとう!
いってらっしゃい!」
こんな状況になって、まだ何も出来てない私の胸が震える。
和の言葉に、少しだけ救われた気がした。
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