646:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 18:01:41.38 ID:zmR1v/Ro0
梓……。
梓が四苦八苦しながらも初めての曲に対応していく。
基本がしっかり出来てる証拠だ。
基本を大事にして、それでいて目立ち過ぎず、フォローも怠らない。
梓を部長としている現軽音部の皆は幸せだろうなって思う。
元部長の私としては少し恥ずかしく感じないでもない。
私とは全然違ったタイプの部長の梓。
だけど、私と一番似通ったタイプなのも梓だと思う。
色んな事を抱え込んで、暴走したり失敗したり、
決して天才型じゃない自分に悩んだり、誰かの事ばかり考えてしまったり……。
一見違ってはいるけど、根本ではかなり似通ってる気がする。
だから、私達はこの世界で他の誰よりも一緒に居て、
普段見ない姿に惹かれたり、心を通わせたりする事が出来た。
私はそんな梓が好き……なんだと思う。
恋愛対象としてなのか、後輩としてなのか、仲間としてなのか、それは分からない。
それは今じゃなく、元の世界で向き合うべき事なんだろう。
元の世界に戻った時、この想いは全て消え去ってしまってるんだろうか?
私の想いも梓の想いも夢と一緒に消えてしまってるんだろうか?
それは分からないけど、信じようと思う。
私達の想いはそんなに軽い物じゃなかったはずなんだって。
ほんの少しかもしれないけど、元の世界でもこの想いを憶えてるはずなんだって。
そんな風に未来を信じようと思う。
私はドラムに想いを叩き付ける。
悔しかった事や悲しかった事もあったはずだけど、そんな想いは叩き付けなかった。
今はただ皆と居られる喜びと、未来への希望だけをドラムに刻んでいく。
大体、初めての曲に嫌な気持ちを叩き付けられるほど、私は器用じゃない。
笑っちゃうくらい馬鹿な理由だけど、私はそれで何だか笑えて来た。
これからも笑えていけるような気がした。
曲が終盤に入り、いつの間にか私の胸の中にある予感が湧き上がって来ていた。
元の世界に戻れるって予感だ。
私達は絶対に元の世界に戻れる。
近い日の話じゃない。
でも、決して遠い日の話でもない。
いずれきっと唯と一緒に皆で元の世界に戻れる。
何故だかそんな確信がある。
だけど、元の世界に戻る事が私達の物語の終わりじゃない。
一つの物語は終わるけれど、私達の人生はそれこそ死ぬまで続いていく。
いや、死んだって続いていくのかもしれない。
私達の残した何かがあれば、そこから色んな物語が始まっていくんだ。
私達の物語はいくらでも終わり続けて、いくらでも始まり続ける。
それは嬉しい事であると同時に、怖い事でもあった。
物語の始まりは喜びに繋がるとは限らない。
悲しみや、怒りや、苦しみや、色んな苦難に繋がっていく事の方が多いんだ。
私達の物語にはまだまだ多くの恐怖に満ち溢れてるんだろう。
でも、その私達の物語の中には、確実に喜びの物語もあるはずなんだ。
そうでなきゃ、今の私達はこんなに笑えてないし、幸せにもなれてない。
音楽で繋がり合えて、想いを伝え合える事も出来なかっただろう。
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