過去ログ - とある白虹の空間座標(モノクローム)
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21:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2012/01/22(日) 00:16:07.04 ID:fjIUU0KAO
〜8月9日・鋪〜

御坂「………………」

麦野「ねえだろ。私だってねえよ」

ヴェンチュリーが左折し、繁華街に面する道路より突き進む中御坂は二の句が告げなかった。
麦野は基本的にあらゆる物事に対して冷笑的である。故に事の本質や欺瞞をその切れ長の眼差しで断ち切る。
店の軒先には縊り殺された照る照る坊主、汚らしく石畳に落ち踏みつけられた短冊が見て取れた。

麦野「別に男と女が一番幸せとも言わねえよ。一番不幸が起きるのも男と女な訳だし。その代わり誰が幸せになった勝ち組に回ったってこれ以上わかりやすい話もないでしょ」

御坂「例えば結婚とか……」

麦野「――子供だよ。出来の良い悪いを除けば、まあ自分が生きた証って言ってもそうズレた事言ってないつもりだけどね」

御坂「それじゃあ子供のいない夫婦は幸せになれないの?」

麦野「……っ」

御坂「(麦野さん?)」

『子供』という単語に麦野の瑞々しい唇が舌打ち寸前の形で苦々しげに歪められるのを御坂は見た。
その表情に、虎の尾を踏んだと言うよりも触れてはならない領域を御坂は感じ取られた。と

麦野「――御坂、あれ」

御坂「あれ?」

麦野「前だよ、前!」

御坂「!」

指差す麦野、向き直る御坂。雨垂れに歪む視界、水煙に包まれた街並みのその先に見えたもの

結標「………………――――――」

白井「――――――………………」

御坂「……いた」

それは19時を指し示す長針と短針が交わる時計台と傘を持つ白井を抱き寄せる結標の姿だった。
痛ましいまでに悲痛な結標の雰囲気と、傘に隠れて今どんな表情を浮かべているかわからない白井。
御坂はそれを息を呑んでしばし見つめていたが、止まれるはずもなく麦野のヴェンチュリーはそれを追い抜いた。

御坂「麦野さん……」

麦野「……これ以上は野暮ってもんだよ御坂。線は引かなきゃいけない。例えあんたがあいつの先輩でもね」

御坂は少なからずショックを受けた。確かに今朝だって白井は自分を起こしに来た。撤収作業でも

麦野「――あ、シャケ弁まだ買ってねえ」

巫山戯けながら自分に抱きついて来たその腕を、傘を持っていない方の手を、確かに結標の背に回していたのだから。




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