112:平凡王 1/3 ◆v2z2fBjR0M
2012/02/19(日) 23:36:36.24 ID:nxXMESmk0
やっちまえ、やっちまえ。油と兵器で黒く脆く肉を焼け。焼け、焼け、敵どもを。
1
ある世界のある大陸。そこでは3つの国が栄えていた。2つは歴史のある帝国と共和国だったが、もう一つの国は
最近一人の男によって作られた国だった。
−−欲望王。ここはそう呼ばれる男の作った熱狂と機械でできた国。新しい武器と戦争の国。血と油で成り上がっ
てきた国だ。
その国のど真ん中には王の住む巨大なお城……のようなものがあった。いやあれを初めて見て城だというものはい
るだろうか? この街に来た旅人はその城を精一杯良く言って−−「機械が積み重なった火山のようだ」と例えた。
ほとんどの者はゴミ山だと思った。しかもちょっと臭いと。その山の側面には深緑に光るむき出しの基盤や、大小さ
まざまなかつ色とりどりのコード、同じように時刻を表すディスプレイなどが張り巡らされてあった。そしててっぺ
ん中央には大きな細長い穴が開いている。瞳のようなその暗い穴。その奥にはミサイルの頭が銀色に光っている。
無数のディスプレイが赤白に点滅して三時ということを過剰に強調する。するととたんに街中の三時のアラームが
鳴り響く。無愛想な音色だ。それにあわせて城の真中に近い部屋あたりからアラームのような大声がする。いやアラ
ームよりうるさくて無愛想。風呂場の壁に埋まった音量計の値が振りきれる。。
「ああ! クソ! ボケがあー!!!」
パアン、とドアの横の電球が割れる。大声を出していた中年男が全力でスパナを投げつけたのだ。ディスプレイや
電球といった色々な機械が埋まっている壁に。そいつは青い工員服の「エルデシュ」という名前の男だ。彼は癇癪を
起こして書類まみれの机をいま叩かんとしている。
スーツを着た長髪の男が書類をサッと取り上げる。ドン、と叩くも机は少し揺れるだけでただ手が痛い。エルデシ
ュはふらあと脱力した机に突っ伏した。そして、しくしく、と泣きはじめた。
スーツの男は自分の髪をいじりながら言う。
「もー。いい加減んキレんの、もうやめてくださいっつーの。中年男が泣くな、泣くなですよ。情けねェ。もう、私
が立場を変わってあげましょうか? あそうそう汚した分は自分で掃除してくださいね」
」
そしてエルデシュの上でも構わず書類をバサッと再び置く。シンマは書類にまみれて、まだ泣いている。スーツで
長髪の男は「ロジクド」という名前だ。
「でもさァでもさァ、ロジたん、なんで俺が人事!? なあ酒飲んで機械いじくろうぜ? それでいいじゃん。人生
いいじゃん。めっちゃいじいじしようぜ!?」
そしてエルデシュは一人芝居のようにハッ、とした表情をして立ち上がる。
「いや、いや、そうだそうだ。酒、機械、その前にまずはバクチだ! うんうんよし今からバクチしに行ってくるわ
ー」
が二秒で背中をムンズと掴まれる。
エルデシュはロジの方をチラチラと見ながら嫌々椅子に戻っていった。そして、書類をまた始末しだした。
え……という男は目付きはどこか鋭いものの、髪はボサボサで無精髭を生やして、ひどく気だるそうだった。頭を
ボリボリ掻いてはロジのスーツのフケを飛ばす。そしてロジにわざとらしく咳き込まれてる。むろんわざとである。
青い工員用の服は動きやすそうではあるが古い油のシミが多くついている。
「やっぱダメだ! 集中できん! リフレッシュに……」と言いかけたとき、別の工員が大急ぎで入ってきた。
・・・
「国王!」
エルデシュは慌てて書類を始末しているフリをすると、こほん、と咳払いしてから工員に答えた。
「どうした?」伊達メガネなどクイクイと上げてみる。この見栄っ張りの変な工員は、実はその国の国王なのだった
。
「ようやく新しい兵器が完成いたしました! この国王が設計なされた、このっ"みさいる"という兵器を使えば!
一発で敵の主要機関は落ちることになるでしょう!」
工員はひどく興奮しているようだった。エルデシュは少し無言でいると、わざとらしく笑顔を作った。
「……そうか、よくやった。今日は全員に休むように言っておいてくれ。いや、明日も休みだ。前祝いのな。ワハハ
」
「ハイッ!」
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