過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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216:ウイングレス・ガーリィ(お題:ハンバーガー) 9/16 ◆pxtUOeh2oI[sage saga]
2012/04/13(金) 00:02:21.33 ID:+8WHHyx8o
礼を言った。彼は高跳びの選手ではないが、いつも準備を助けてくれるのだ。
「いえ」
 だが、そんないつもの返事を言った顔がいつもとは違っていた。明らかになんというかニヤついている。その
ニヤつきは嫌味な感じではなく、心の底から幸せを感じている、そんなニヤつき。つまりどちらにせよ、ヤナカ
ンジ。
「なにかあった? 幸せそう」
 嫌な予感。だが聞かねばなるまい。
「いえ、その……彼女ができたんです」
 予感的中。思わず、持っていたマットの持ち手を話しそうになったが、なんとか耐えた。
「あんまり言わないでくださいね。相手、マネのエルン先輩なんで」
 やっぱ放した。急に重さが増えたからだろう、彼は歩きをとめてうろたえていた。それからこちらの反応に対
して不満みたいなものを言う。だけど幸せそうで、不満もちょっと言ってみただけみたいな、そんな程度だ。
 エルンは、あたしと同じく二年の女だ。
 やな女だ。あたしは嫌いだ。
 というかマネジャーなんだから、本来ここでマット運びを手伝っているのは彼女のはずなのである。重たくて
持てないというかいうふざけた理由さえなければ。持ってるあたしはゴリラだとでも言うのか。
 その後はよく覚えていない。テキトーにちゃかして、時折笑顔で「別れなよ」とか本音を混ぜた雑談をして、
結局、マットは一緒に運んで、一人で練習をはじめた。
 バー代わりにゴム紐を張ったところへ、斜めに走りこんで体を捻り空を拝む。上半身は問題なく超えた。いつ
ものように空を超えてグラウンドの様子まで視界に入った。それなのに、向こうの方で練習する一団が見えて、
足をあげ忘れた。気付いた瞬間にはもう遅すぎて、足がゴム紐を巻き込み、左右の支柱ごとマットに転がり落ち
るはめになった。これではまだバーを使ってたほうがマシだっての。
 派手な音がたったので、顧問が様子に気付いてかけよって来そうだったが、いらない、というジェスチャーを
見せる。今、来られるのは困る。なぜなら衝撃で我慢できずに泣き出してしまったから。
 支柱を直すふりをして、グラウンドに背を向ける。こちら側は道路だけど、駅とは反対の道なので車しか通ら
ない。
 痛かったわけではない。幸運にも支柱があたったりはなかった。
 好きだったわけでもない。ちょっといいなと思ってた程度だ。いつも手伝ってくれるかわいい子だったのだ。
 そんなんでショックを受けるのが自分勝手だというのはわかる。あたしが今まで何もしてこなかったことも事
実だ。部活のあとになんか食べに誘ったりとかもしてない。


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