326:火(お題:高架下)1/4[saga]
2012/05/10(木) 14:34:44.67 ID:LvS9fQcAO
わたしは歩いていた。
いつからここにいるのだろうか。
頭のなかに靄がかかり判然としない。
立ち止まり周りを見渡してみた。ガラス越しに白い煙が立ちこめている。いや、霧だろうか。外の景色がすっぽりと覆い隠されている。
足下の黒く弾力のある床は道の向こうまで延び、途中で暗がりにとけ込んでいた。ガラスに囲われた長い筒状のトンネルだ。
自分の体を見やるが、特に変わったところがない。
おもむろに上着のポケットに手を入れる。すると左手がなにか堅いものに触れた。指でなぞると厚さのあるコインの形が頭に浮かんでくる。片側の面に大きな窪みがあるようだ。
それを指でころがしながら、ぼんやりと考えに沈んでいた。その時だった。
びたん
突如トンネル内に不気味な音が響いた。いつのまにか辺りが暗くなっている。
頭上の気配。ぴちゃぴちゃと水の滴るような音が聞こえてきた。冷たいものが背筋をつたい、本能がそれを見ることを拒んだ。
わたしは俯きながらゆっくりと歩きだす。
びた・・・・・・びた・・・・・・びた・・・・・・びた・・・・・・
こちらの歩調にあわせ、どこかいびつな影と粘ついた音が追ってくる。
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