328:火(お題:高架下)3/4[saga]
2012/05/10(木) 14:38:23.62 ID:LvS9fQcAO
無音の静けさが鼓膜をくすぐる。
なにもおこらない。
が、しばらくして変化があらわれた。
異形の飛蝗の透明な羽がぴくぴくと痙攣しはじめる。そして出し抜けに、ダンッとバネ足でガラスを蹴りあげて立ちこめる霧のなかへと消えていった。
わたしはその場に崩れ落ちる。いまだに体が小刻みに震えていた。自身になにが起きているのか理解できない。
だが状況は考える暇を与えてくれそうもない。
目の前の霧が意志を持つかのように急速に薄れいったのだ。そこに据えていたままの目が、否応なくガラスの外側へと吸い寄せられる。
遙か眼下、岩くれの転がる赤黒い焦土が広がっていた。そこには体毛のないピンク色の肌をした四つ足の獣が這いずりまわり、ぬらぬらとした黒褐色の節足動物が小さく蠢いている。
方々には悶え叫ぶように開いた黒い穴が見える。その苦悶の口からなにかが素早く這いだした。それは手近な生き物を捕らえると、ずるりずるりと元の場所へと引きずり込んでいった。
その醜悪な光景は咀嚼するように、わたしの脳を犯し、正気を蝕んでいく。
やがて、意識の糸がプツッときれた。
だんだんと視界が霞み、あかく、あかく、染まって
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