445:滑稽な西日6/8(お題:秘密基地) ◆xaKEfJYwg.[sage]
2012/05/31(木) 01:37:06.01 ID:utSI55PFo
「ねぇ、私って無理してると思う?」
「分からない。けど、ぼ……私は無理してる。……みんな思っちゃうんじゃないかな。誰もが
自分と同じ人間なんだって。弱いところがあって、泣いたりするもんなんだって」
「私だって人間よ。弱いし、泣くこともある」
「どんなときに泣くの?」
「私だけの秘密の場所まで友達になりたい人を案内したのに、それでも心をゆるしてもらえな
いときよ」
山田の顔がくしゃっと縮んだ。
「私、死にたい」
鼻腔からきらきらした綺麗な水が流れ出て、眼球が潤んで光っている。
僕は、どうしていいかわからなくなったから、両腕で彼女の両肩を挟んで引き寄せた。
「山田さんが死ぬなら、僕も死ぬよ」
∇
出会いはどうもドラマティックに覚えているのだけれど、別れは読み終わった漫画本のよう
に滑稽なものだ。
結果をいうと、山田は自殺した。実家の一室で首を吊った。
私が彼女を両肩を引き寄せたって、彼女の笑顔に手を振ったって、何一つ変わらなかった。
私は相も変わらず歩を進め続けている。目の前に大きな坂が見えた。ここを、山の麓に沿っ
て右折する。
途中、何度か犬を連れた老人を見かけた。
そして私は、山の頂上で糞をして気持ちよくなっている犬の姿を思い描いた。
△
山田は首元にうずくまりながら、僕の膨らみ始めた胸を掴んだ。
「……かのが羨ましい」
「どうして死にたいなんておもうの?」
「……」
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