517:空は誰よりも空気を読む(お題:小雨)2/3 』 ◆euRfGW8cm.[sage]
2012/06/11(月) 11:01:40.63 ID:U/cHPw7Q0
走って汗だくか、歩いてびしょ濡れかの選択肢。
数秒悩んでから、歩く事にした。だって、走ってもびしょ濡れになるかもしれないもの。
びしょ濡れだし汗だくだし。なんて踏んだり蹴ったりは避けたかった。
こういうのをなんて言うんだっけ? リスクヘッジ? お兄ちゃんがこないだテレビを見ながら熱く語ってた気がする。
このまま雨足が強くならない事を願って、とぼとぼ歩く。ゆっくりと歩けば雨が当たる面積を減らせるかもなんて考えるバカな私。
いやいや意外と、わかんないですよ?
ここまでくれば学校まで後ほぼ6分。5分でなく、6分の地点だ。
流石に2年も通うと、どこで後何分か、みたいなことを身体と頭が覚えてくるものだ。
雨足は強くならないまま、私が6分の地点からほぼ5分の地点に移り変わろうとした時、違うルートから男子生徒が現れた。考えるまでもなく見破れるのは多分・・・・・・恋してるから?
男子生徒は、涼介君だった。
「あれ、おはよう南。天気悪いなぁ今日は。午後から降水確率90%だってさ」
涼介君は私を目にした瞬間から話しだした。なんていうか、頭の回転が速いんだなぁきっと。
「うん、おはよう。じとじとしてやだね。部活なくなったらちょっとラッキーなんだけど」
「マジで? 俺は部活したいなぁ。サッカーは楽しいよ、気が向いたらサッカーもやってよ。テニスで腕使ってんだから、足も使おうぜ」
へへっ、と涼しい笑顔で涼介君は言った。いつだっていろんな物を、本当に楽しそうに言うから、好きで仕方がないんだ。
しばらく二人で、前を向いて歩いた。
警察署の横まで来て、後4分で着く距離。だけど、後1分くらい歩くと通学路が皆と合流して、「二人っきり」じゃなくなっちゃうなぁなんて、ちょっと罪深い事を考えてしまった。
相変わらず、気にならない程度の小雨が降っている。目には見えるけど、身体に触れない、そんな雨。
確かにあるのに、ないのと一緒。
多分、恋心もそうだ。
言わないと、伝えないと、ないのと一緒。
「あれ、そういえば南。お前傘は? 午後は90%なんだから、絶対に振るよ」
「荷物が重かったから置いて来ちゃった。大丈夫、職員室で借りられるからね」
涼介君はそっか、と納得してくれた。
ちょっとだけ、涼介君の傘に入れてくれたらいいなぁと思ってしまったけど、職員室の傘を借りると言ってしまったのでもうそれも望めそうにない。
というか、本当に傘がなくても、そんなこと恥ずかしくて頼めた物じゃない!
そりゃぁ、涼介君は良い人だから頼んだらノータイムでオーケーしてくれると思うけど、私の方がもたない。なんにしたって、無理な話だ。
でも、よく考えると。と、ふと思った。
今もし、雨が降り出したらきっと、自然に入れてくれるような気がする。
というか、入れてくれる。これはもう、確信だ。
だって、涼介君だもの。
流石に嫌らしい思考をしてしまっている。
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