過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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601:お題:飛び降り自殺 1/3
2012/07/07(土) 01:17:35.30 ID:oTyjAIGEo
 一歩先を覗き込むと、遥か下に地面が見える。飛び降り自殺にぴったりな場所で、僕はただ立ち尽くしていた。
 この忌々しい世界からいなくなろうと自殺を考えたんだ。そして適した高い場所も探した。そしてそこに立っているというのに僕の心には嬉しさや喜び、達成感などは一つもなかった。味わったことのない恐怖が鈍い足音を立てて僕の頭の中を歩き回っているようだ。死にたかったはずなのにだ。

 ほんの数日前までは、この状況を望んでいたはずだった。どうやって死のうか一日中考え込んで計画を頭の中で何度も練った。
そして、思いついた。単純な話だったのだ、高いところから飛び降りて地面に落ちれば簡単に[ピーーー]ると。だからこそ、僕もそうしようと思った。

「くそ……、高いところは結構好きだったはずなんだけどな。今は凄く恐ろしく思える」
 自分の立っている場所から数歩先はもう足場が無い、そこを覗き込みながら僕は一人そう呟いた。
額からは汗が滲む、暑いわけではないのに汗が止まらない。なぜだ?もしかして、目前の死を恐れているのか? まだ未練があるというのか?

「ちがう、違う! そんな未練なんてあるものか! 僕はこの世界に嫌気がさしたんだ!」
 首を大きく振りながら叫んだ僕の声はあたりに少し響いた後に、風の音で消えていった。

 そうだ、僕はこんな世界は大嫌いだ。
 毎日毎日、上司には小うるさく命令されて仲間と一緒にひたすら与えられた仕事をこなす。僕達の仕事はチームワークが大事だと言われ、その連携を乱すようなことをすれば何を言われるかたまったものじゃない。必死だった、仲間に迷惑をかけないように。与えられた仕事を必死にこなした。
 そんな僕の哀れな姿を見て『働きアリね』と揶揄する者さえいた。……ふざけるな! 僕は、僕はそんなものじゃない。それなのにこんな扱いを受けている。

 僕は、怒りに身を任せて一歩踏み出そうとした。あと一歩踏み出せばもう落ちることができるだろう。しかしながら、僕の脚は地面に固定されてしまったかのように少しも動かなかった。実際に固定されているわけではないのに。


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