過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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603:お題:飛び降り自殺 3/3
2012/07/07(土) 01:27:58.15 ID:oTyjAIGEo

 私は、目の前で飛び降りた彼をみながら考えていた。彼の計画は殆ど完璧だったろう
高さもそれなりにあるし地面にはクッションがあるわけでもないし。でも、彼は[ピーーー]ないだろう。死ぬ事はできない。

 なぜかって? 彼は一つ大きな問題を抱えているからだ。
 彼は『アリ』なのだ。彼は知らなかったようだけれど、蟻はどんなに高いところから落ちても死ぬ事は無い。
人間と同じように飛び降りたとしても、その体の軽さが災いして落下の衝撃に耐えられてしまうのだ。だから、彼は飛び降りて[ピーーー]なかっただろう。彼の願いが叶うこともなかった。
 こんなに高いベランダから落ちたとしてもだ。彼の唯一の誤算は、彼の計画そのものを揺るがす大問題だった。

「残念ね、アリさん。[ピーーー]ないなんて”アリ”えないわね」
 私はそう呟くと、笑った。大声で笑った。あたりには私の笑い声が響き渡る、笑いが止まらなかった。
しばらく笑ったところで、ようやく私は落ち着きを取り戻した。乱れた息を深呼吸で整える。よし、もう大丈夫だ。落ち着いた。

「さてと」
 私は先ほどの彼が飛び降りていったベランダの柵に手をかけ下を覗き込む。人間の私から見てもここは高い。
 遥か下に広がっている地面を見つめて彼を探してみた。だけど、こんな高さから地面にいるアリの彼を見つけるのは不可能だ。実際、地面を見つめていても何も見つけれなかった。

「……よし、じゃあ次は私の番ね」
 そんなことを呟きながら、私は柵に足をかけて飛び越えた。勢いのついた私の身体は空中に放り出される。
 地球の重力が私の体を地面へと引き寄せていく、身体に感じる風が不思議と心地よい。約束された死が駆け足で私のもとへとやってくる。
 私に死を与えてくれる地面が目の前まで迫ってきた。
 さぁ、死ぬ時間だ。それでは皆さん、さようなら。

終わり


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