過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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727:海に還る(お題:五百円) 2/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:54:02.72 ID:EC3QnlO+o
 今回の目的地は海である。普段海にほとんど関係のない生活をしている僕にとっては、海
岸まで歩いて五分の駅に五百円以内で行けるという事実はなかなか驚異的なことだ。
「海は久しぶりだよね」
「そうだね、シーズンから半年以上経ってるわけだし」
「うん」
 彼女はコートのポケットに手を突っ込み、座席に浅く腰掛けている。今日は制服を着てい
くことに決めていたため、彼女のスカートが心なしかぱりっとして見えた。
「昆布食べる?」
「ありがとう」
 出かけるときは乾燥昆布だとか、決まりごとではないけれど大事にしているものはたくさ
んあって、それは僕らだけのものであり、僕らの仲を表しているものだと思う。凝り固まっ
ていると言ってしまえばそれまでだが、新しいことをしていくには土台はしっかりしていな
いと足元を掬われてしまう。信頼関係とは、そういうところからそういうところから作って
いくべきものではないだろうか。
 僕と彼女の間で不変だったものは確かにあった。では僕らの成長とは一体どこにあるのだ
ろうか。彼女はいつでも興味深い存在だったし、僕は彼女と一緒に楽しみ、それを記録して
きた。では僕らはその結果を自分たちに活かすことができていたのか。楽しんでいただけで
はなかったか。正直なところ、よくわからない。
「眠い?」
「いや、来る前に少し寝てきたから大丈夫」
「そっか」
 彼女が眠そうに見えたのは、いつもよりおとなしいせいだろうか。マフラーから覗く顔は
、不安と期待がない交ぜになったような表情に変わっていた。もうすぐ目的の駅である。


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