771:てぶくろ(お題:ロリ)1/4 ◆xaKEfJYwg.
2012/07/30(月) 00:07:39.75 ID:b/0IA63qo
私は、子どもと接するとき、多くを語らず態度で示すように心がけている。
学校の帰り道のすがら、いろはが手を差し伸べ私の手を求めたときに、眉間にシワを寄せ拒否
したのは、そういった理由からだった。
「手、つないじゃだめなの? わたし、汗でびっちゃびちゃでも気にしないよ、ほら」
いろははそう言ってにっと笑って、両手をあげ、汗で濡れて光った小さな手のひらを私に見せた。
「……わたしだって」
彼女は、それでも私の表情がほぐれないことを気にして、指と指の間までしっかりと見えるよ
うに私に配慮した。
私は知っている。さっきまでいろはが、蟻やダンゴ虫、ワラジ虫や蜘蛛をつかんで遊んでいた
ことを。
「……洗ったよ?」
それも、知っている。公園で遊び終わった後に、水呑場で手を洗わせたのは私だからだ。
私は、ポケットから白い手袋を取り出して、両手に嵌めた。そうしてから安堵の溜息を吐くと、
彼女の指の隙間を埋めるように、手のひらを重ね握る。
いろはは、そうじゃない、と言って俯いた。
知っている。そうじゃないことぐらい。
いろはを家の前に送り届けるまで、私たちは手を繋いだまま歩いた。話はしなかった。
縦割り教育というものがある。私といろはが出会ったのは、今年から始まった学校のカリキュ
ラムのおかげだった。登下校に家の近いもの同士が集まって話をしながら帰るというものだ。
私の家は街の外れにあって、かなう学生は一人しかいなかった。つまり、二人だけで楽しくお
喋りをしなければならない。
……話といっても、中高一貫の私立高校三年の私と、付属小学校三年のいろはに共通する話題
なんてない。何を話せばいいのだろう?
そのことを昼食中、友人に相談したことがある。
彼女は向かい側で笑っていた。
「子どもなんて、公園で遊ばせときゃいいのよ。ボールでも用意してドッヂボールやりましょう?
鬼ごっこするよ。私が鬼よって。砂場でトンネルを作るのもいいわね。それでもどうしようもない
なら、体を持ち上げて高い高いでもすればいい。手を握ってぶらぶらするだけでも喜ぶものなの」
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