過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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774:てぶくろ(お題:ロリ)4/4 ◆xaKEfJYwg.
2012/07/30(月) 00:10:43.59 ID:b/0IA63qo
「大丈夫。薬を飲ませたし、両親に連絡もした」
 白衣の女性は、微笑んでいろはの顔を見つめた。
「いろはは……具合が悪かったんですね。気がつかなかった」
 自分の不甲斐なさが悔しかった。いろはの心配の次に湧き上がった気持ちは、幾度となく感じ
続けてきた自己嫌悪だ。
 女性は、私に向かって優しい声で言葉を掛ける。
「ここに居て、菌と戦ってるいろはちゃんを励ましてあげて」
 両親がこっちに向かっているから、無理しなくていいけど、と言葉を繋げて彼女はカーテンを
締めた。
 私は、そのままの状態でいろはの寝顔を眺め続けた。どれぐらい経っただろうか、西日の明か
りが弱まり、保健室に蛍光灯が点いたころ、いろははやっと目を覚まして私の手を強く握り返し
た。そして、握り締めた手の持ち主を探るように、視線を宙にさ迷わせる。
「……おねえちゃん、ごめんね」
 彼女が、言葉と裏腹に嬉しそうに笑ったのを見て、私は嬉しくなった。
「アイスは明日食べよう。ちゃんと風邪が治ったらね」
 そういってやっと、あの私が直にいろはと手を握ってることに気づいた。
「アイスはいい。その代わり、ここでお話しよう? あのね……」
 いろはは、私の手をもう二度と離さないとでも言うようにきつく握り直し、微笑んだ。
 私は、子どもと接するとき、多くを語らず態度で示すように心がけている。子どもには、それ
だけで十分伝わるのだ。私は、今日の出来事で、少しだけ自分のことが好きになった。
 私も、いろはの嬉しそうな顔に微笑み返した。

END


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