過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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861:少年よ五百円玉を抱け 5/10 ◆1ImvWBFMVg
2012/08/01(水) 07:46:10.07 ID:idTh5FcP0
『彼らが動くとは思えません。もしかしたら事件の方は防げるかもしれませんが、ただそ
れでは起こした犯人自体を救うことが不可能になってしまいます』
「えぇ? 犯人を助ける? 一体なぜ?」
 犯人の事まで救うとは。天使だから、当然といえば当然の考え方なのだろうか。たいそ
う立派な志であるが、なるべくなら面倒事は避けたいというのがこちらの本音だ。
『そうですね、なるべくなら避けましょう。ファイトファイト。ところで本当に恵まれな
い人というのはどういう人たちの事だと思いますか?』
「え?」
『さきほど募金のときもお伺いしましたが、恵まれない人に救いの手をさしのべてほしい
と言うお願いについてです。それでは本当に恵まれない人々というのは、どのような状況
に置かれている人たちのことでしょうか?』
「……貧しくても心は錦、とかそういう話ですか」
『違います』
 なるほど、どこか違うような気はしていたが言ってみた。やはり違ったようだ。
『希望をなくすこと。これが一番の不幸です。どれだけ貧しかろうと、いつかは贅沢して
やるという野望を捨てないこと。不幸に見舞われようと、そのような幾ばくかの望みさえ
あれば、人は案外生きていけるんです』
「それは……」
『本当に希望すらなくなった時、人の心は簡単に折れます。その歪みは色々な過ちを犯す
原因のような物を作り出します」
「つまり犯人の……」
『ジェントルマンさん、あなたは罪を犯した人々が、全員悪意に充ち満ちていたと思いま
すか?』


 ずるずるとバイト先についてしまった。駅前の商店街を少し入ったところにある、一軒
家より少し大きいぐらいの洋食屋だ。キッチンスズキ。オーナーは父親の知り合いである
初彦おじさんだ。シェフも兼ねている。店長は綾音おばさん。二人とも実によくしてくれ
ているとてもいい人だ。ほんとうにいい人たちなのだ。
「どうした克俊、ずいぶん元気ないじゃないか」
 調理場のすみに吊していた給仕服に着替えていると、初彦おじさんが忙しそうに顔だけ
出した。店内にはすでに客が入り始めていて、席がちらほらと埋まってきている。
「いや、そんなことはないです……元気です」
もう席に居るのだろうか。ため息が自然と出る。何度も何度も繰り返し出てくる。
「んん? 何があったかは知らんがね、お客の前ではもっとにこやかにな」
『うん、なかなかいい店みたいですね。夕方なのに賑わっているし、働いている人たちも



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