過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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908:感想[sage saga]
2012/08/06(月) 00:25:17.81 ID:XiPSvHLq0
> 波打ち際で立ち止まった彼女の隣。波の音、風の音は聞こえているけれど、それ以外は何もなくて、とても静かだ。
>暗闇の海には様々なものを飲み込んでしまいそうな怖さと、そして包容力があり、僕は後者をひしと感じた。

> 題目はとても意義あることに聞こえるが、結局は折角来たんだから足だけでも浸かっていこうということである。
>こういうとき、彼女は結果よりもやること自体に意味があると言い、結構無理やりに人を引き込んでいく。そもそも
>僕自身も満更ではないのだ。ただ、未知数である海水の冷たさに腰が引けているだけである。

>花火はよくある薄くて大きいあのパッケージである。あれには同じススキが何本も入っているので一度にたくさん持
>って消費してしまいがちだが、一本ずつ大事にしていけば相当な時間をかけて遊ぶことができるのである。値段も安
>いし、言うことなしだと評価したい。

> どちらともなく自然に感嘆の言葉が出た。ススキの火は、白、緑、赤、青と様々に色を変えていく。そして、それ
>が消える前に次に火を移す。ろうそくの火はあまりにも頼りなかったので、花火同士で火を繋いでいった。二本持ち
>して踊ってみたり、色の違う火を混ぜてみたり、時々ろうそくにも火をつけてみたりして、花火をゆっくりと消費し
>ていった。

 こういう文章ははっきり言うと何にも残していかない文章だったりする。事実すぐに二人の会話なり展開の進展なり
が続いて時間は流れていき、思い浮かんだことも忘れていく。それこそ現実ならではだよなあ、と思えるのもさること
ながら、重要なのはこうした独白が心が安定しきっていない主人公によって為されている、ということ。沈黙を嫌って
やたらと話しかけてくる人間っていないだろうか? そして口にされる言葉が大抵意味がない、っていうことも?
あれは言うまでもなくコミュニケーションを図ろうとする努力であって、人間はとにかく話せばなにかしら気持ちが通
うような気がするから話さざるをえない。この小説の主人公にとってもそれは同じで、何も決まりきっていない状況、
視界の効かない夜の海、それから不安定な関係を結んでいる「彼女」とどうにかしてコミュニケーションを取ろうと頑
張って言葉を並べる。でも大抵は実を結ばない。そんなハラハラとした緊張感が6レス目まで上手く書けているし、5
レス目の線香花火にまつわる叙述はもはやメタファーとして機能している。
 その緊張感が、6レス目になると「彼女」の一言によって崩される。「楽しかったかな」という言葉は現実に流れる
時間をとどめて、二人の思い出として今ある風景をどう対象化しようか、という提案でもある。ここで不安定だった二
人の関係性は決定的なものになるし、未知に近い海は二人の思い出ともなる。それに主人公もこういう言葉で答える。


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