938:みんなでしあわせになりたいな 1/8 ◆pxtUOeh2oI[sage saga]
2012/08/12(日) 16:20:18.62 ID:Fg9PIfkpo
人々が、魔法を捨て科学を選んでから数千年が経過した時代。
人々が、相違な価値観を受け入れることができないほど遅れた時代。
人々が、人々と徒党を組み、人々と敵対し、そうやって生きていく普通の時代。
「それではアズランさまに祈りましょう」
国府津家の食卓。夕食をかこんで、四名の家族皆が目を瞑り、手を胸の前でにぎり、祈りを捧げる。
「母と子と精霊よ、アズランの御名に、今日この食事を賜れることに感謝します」
「いただきまーす」国府津ミズキとアズランさまが大声を出してからご飯をほおばりはじめた。
これが毎日の光景である。ミズキもアズランさまもどちらも食欲が旺盛なのだ。
ミズキはこの家の子供だった。中学一年生の女の子。髪が短くボーイッシュで、線が細いが運動は得意、そん
な感じ。
アズランさまは神様だった。容姿はミズキと同じくらいの女の子に見える。だけど年齢は桁が三つか四つぐら
い違う。髪は長く亜麻色で、胸はミズキよりも大きく平均的だが、見た目はとても子供っぽい。そんな感じの神
様で、今はこの国府津家に居候している。
「ねえ、アズランさま」
「なに?」
ミズキの呼びかけに、からあげをほおばっていたアズランさまは顔を斜めにして向き合った。
「前から思ってたんだけど」
「わたしが綺麗ってこと?」
アズランさまの言葉をミズキは無視する。
「アズランさまって、ご飯の前に、何に祈ってるの?」
アズランさまがからあげに伸ばしていた箸が止まる。夫婦で話していたミズキの両親も会話が止まった。
「あたしとお父さんとかは、アズランさまに祈ってるわけでしょ? じゃあアズランさまは?」
「……自分自身?」
「疑問系?」
だって、みんなが祈ってるのに自分だけ我をあがめよみたいにふんぞりかえったりできないじゃん、とアズラ
ンさまは思った。別にやってもいいけどさ、ともアズランさまは思った。
「空気を読んでるんだよ。合わせてあげてるの。祈ってるんだよ、これかも家族みんなしあわせにでいられるよ
うにって」
「ふーん」
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