985:あなたの声を祈りによって聴く可能性について3/10 ◆ihO9dxzf9I[sage saga]
2012/08/12(日) 23:38:46.53 ID:30xXBl/o0
7月5日(木)曇り
練習中、高岡からよく声を出していてよろしい、と言われる。なぜか恥ずかしい。お前のために声を出してるわけじゃ
ない、なんて悪態をつきたくもなったが、高岡は良い先生だから気が引ける。高岡も他人が良く見えている人だ。父さん
がバスケの応援に来た時に高岡を評して、でかい図体で仕事が出来る人っていうのは気おくれしてなあ、いちいち圧力を
醸し出すもんだから気圧されて段々と降参するしかないと思うようになるんだ、なんて言ったことがあった。降参すると
いうより、活力をもらうといった方が近いとは思う。数学が苦手だった新田も、勉強は教師が良くないと駄目だよな、と
知ったような口を聞いていた。
授業の質問で職員室を訪れた時、小難しいが面白い数論の話をしてくれたことがある。数学は意味がない、使えない、
だとか言われてるけど、実用性を度外視したところに生まれる価値っていうのもあるんだ、その点君は楽しく人生を送れ
るよ、とも言い添えられた。数学は好きだがそんなことは考えたこともなかった。高校数学なんて一年でマスター出来る、
なんて言っていた兄貴の薫陶を受けたおかげで今の自分が出来ているだけだ。それに楽しく人生を送れると言うが、何を
すればいいんだろう。数学に一生携わる? 教師にでもなればいいんだろうか。想像もつかない。学問もバスケも結局は
自分のためにやるものだから、そう長くはやらないだろう。もっと他人のためになることがしたい。
7月6日(金)曇り
昼休み、リュウタ君から食堂に誘われた。部活のことをしゃべっていると脈絡もなしに、サエちゃんとはどうよ、と訊
かれた。どうよもなにも、特にない。どんだけウブなんだよ、となじられたが、言えるものなら言いたい、だけど言った
ら何かが崩れる気がする。そんな風に返したら、お前将来サエちゃんの顔見て失望するタイプだよな、と呆れられた。リ
ュウタ君はどうやって踏ん切りつけたんすか、と訊いたが、踏ん切りなんてもんじゃねえよ、好きだから好きって言い続
けただけだ、と当たり前の答えしか返ってこなかった。
何かが崩れる、っていうのは偽りない気持ちだ。成功しようが失敗しようが、自分が崩れる気がする。サエを一方的に
見ていることで生まれる自分が。その後の関係とかではない。結局童貞の負け惜しみか。モテる男っていうのは自分の中
で何かを考えるのではなく、常に外側(相手)に合わせ続けてこそだとリュウタ君が言っていた。そんなものなのか。
7月7日(土)晴れのち曇り
七夕。願い事は無難にウィンターカップ出場と書いておいた。リュウタ君にからかわれる。サエからももうちょっと大
きな願い事にしなよ、と言われた。そういえば、サエとまともに話すのは久しぶりだ。
7月8日(日)曇り
川城の調子がやたらと良い。岡崎さんでも止められなかった。珍しくテツや広松の指導もやっていた。部長の自覚って
やつか、とからかったつもりが、そうだねえ、と3on3を見ながら呟いていた。深く呼吸しつつ視線を固めているものだ
から、部員のプレイを見てるというより自分の考えをまとめているといった感じだった(まあ、いつも通りだ)。
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