過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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992:あなたの声を祈りによって聴く可能性について10/10 ◆ihO9dxzf9I[sage saga]
2012/08/12(日) 23:45:39.50 ID:30xXBl/o0
てマレじゃない、たとえば川城君とかね、最初から自分一人でやっていける力があるからこそ性格もそうなっていくし、
周りもそれに合わせてくれるんだろうけど、そんな力がない人間も含めた全員が自分だけで生きていったら、力がある人
も活きなくなっていくでしょ、違う? とサエはようやく顔を戻してくれた。
 もっともなことだと思う。それどころか、俺が普段考えていることに近い。そう同意すると、だよねえ、だからアンタ
も他人に頼りなよ、自分で思ってるより不器用なんだから、と指を指された。でも今にして思えば、それだけで二人きり
で話す理由になるのだろうか?
 合宿のことやお盆のこと、それから修学旅行のことなど色々と話した後、店から出て公園におもむきハンデありの1on1
をやろうと提案される。俺のペイントエリアへの侵入およびペイントエリアでのブロックは禁止。おまけにジーンズを履
いていったから動きづらくて仕方なかった。けれど11−10でギリギリ勝利。その後3セットやって一度だけ負けた。
一度だけ勝った時、サエは本当に嬉しそうにガッツポーズをしていた。
 日が暮れると、サエは駅まで送ってくれた。合宿、お互いに頑張ろうね、と手を振ってくれる。俺はうなずくことくら
いしかできなかった。一体なんと返せばよかったんだろう。俺にはサエの方が一人で背負ってしまっている気がする。サ
エは優しいから、もしかしたら川城みたいに一人でやっていける人間なのかもしれない。でもそうじゃなかった時、どん
な言葉をかければいいんだろうか……その言葉を見つけるための日記なのに何にも出てこない。
 7月31日(火)晴れ
 日記を書き始めて一ヵ月経っている。岡崎さんの言うような、他人に目が行き今の自分が見えてくる、という状態にな
れているのかはよくわからない。日記を書いたり読んだりしているとその時々の自分が別人として現れ、励ましたり悩ま
せたり叱ったり、そんな声が聞こえてくる気がする。自分の書いたものなのに気味が悪い。これと折り合いをつけられる
ものか、それとも打ち消した方がいいのか。昔よりはバカじゃなくなっていればいいんだが、それさえも危うい。
 8月1日(水)曇り
 今日も会えないと思っていたのだが、川城と帰り道を歩いているとサエと会った。英語の宿題でつまづいたため早めに
やってきたのだという。一昨日のことだけど、と言うと首を傾げられた。かといって、特別上手い言葉が見つけられたわ
けでもない。思わず話題にせずにはいられなかっただけだった。もうちょっとお前にも頼ってみようと思うよ、と言った
ものの、そう言っときながらアンタは頼ってこないじゃん、と満足の行く答えではなかったらしい。ま、お互いじっくり
と悩んでいこうよ、と笑って言われたので、重い空気にはならず自分の至らなさも和らげてもらえた気がした。
 サエと別れた後川城に何の話かと問われたので、かいつまんで説明すると、俺は他人の分まで悩むのなんて面倒だけど
なあ、と冗談めかしてから、でも他人に聞いてもらえると、それだけで自分がハッキリするってことはあるのかもな、自
分の責任感を裏付けてもらえるっていうか、と要を得ないことを言った。
 明日から静岡に合宿。バレると面倒なので日記は持っていけない。


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