14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/29(日) 21:57:26.34 ID:EQn04HIIo
その日の学食であたしは予定を変え先輩とは世間話をして別れた。
先輩は少し不審そうだった。
「おまえがただお喋りしたくて俺を呼び出すなんて珍しいな」
先輩は言った。
「たまにはいいじゃん」
あたしは気軽に答えたけど心の中では絶望と怒りが黒々と胸の中に溢れていた。でもその感情をここで持ち出すわけにはいかなかった。
「まあ、おまえと会えたんだからいいや。あ、そうだ」
先輩は少し真面目な顔で話し出した。
「あのさ、俺もうすぐ受験じゃん」
「うん」
先輩の受験予定の大学は名前さえ間違わずに記入すれば合格すると学内で揶揄されていた大学だった。
「だからさ、しばらく俺受験勉強に専念するから」
「うん。頑張ってね」
「おう。つうわけでおまえともしばらく遊べないからな」
「・・・・・・そうか」
あたしはポツリと言った。本当に一人ぼっちになってしまうのかもしれない。先輩からしばらく会えないと言われて初めてあたしはどれほど先輩の存在で自分の心のバランスを取っていたかを思い知らされた。
「まあ、受験終わったら派手に遊ぼうぜ。あとさ、しばらく会えない分今晩どっか行かねえ?」
「いいよ」
あたしはすぐに答えた。
「やった。じゃあ久しぶりにボーリングでもするか」
「任せるよ。どこでもいい」
今晩はお母さんが帰ってくるのでお兄ちゃんと二人きりにはならないだろうけど、それでもお兄ちゃんと顔を合わせるのが嫌だったあたしには、先輩の誘いは好都合だった。
「じゃあ後で電話するな」
先輩と別れて教室に戻ったあたしにはもう妹友ちゃんは近づいてこなかった。妹友ちゃんは明らかにいつもよりはしゃいだ様子で友だちと何か話している。言うべきことを言い終えたのでもうあたしには用がないということなのか。
あたしは混乱する気持ちを持て余しながらそんな卑屈なことを考えていた。
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