38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/30(月) 23:37:37.79 ID:eVa5ekcTo
「あのさ」
先輩が真面目な表情で言った。
「今日で俺たち別れようぜ」
一瞬何の話か理解できないままあたしは凍りついた。そのまま頭の中が真っ白になったあたしに先輩の言葉が続いた。
「もうこれ以上付き合っていてもお互い疲れるだけだしさ」
これは何かの冗談なのだろうか。あたしは先輩との仲を修復しようと決めたばかりなのに。
これは何かの誤解なのだろうか。あたしはお兄ちゃんと破局したばかりなのに。
「おまえを責めるつもりはねえよ」
先輩は淡々と続けた。
「俺だって正直浮気みたいなこともしたことあるしさ。でも俺のは本当に浮気だったんだけど」
でもよ、先輩は言った。
「おまえはさ、兄貴のこと本気で好きだろ? 男として」
あたしはここまで先輩の言葉に一言も反論できなかった。これまで先輩が我慢してくれていた方が不思議なのだ。それなのにあたしはそういう先輩に一方的に甘えてきたのだから。
そしてようやく働き出した頭の中では今先輩が話した言葉がぐるぐると回っていた。
『おまえ、兄貴のこと本気で好きだろ? 男として』
そうだ。先輩の話を聞いてようやくはっきりとわかった自分の感情。
今まで感じていた寂しさや喪失感は学校で仲の良い友だちがいないとか、自宅で家族がいないから感じていたのではなかったのだ。
あたしはお兄ちゃんのことを今でも求めている。あたしの感じていた寂寥感や喪失感はお兄ちゃんを失ったからなのだ。
あたしはまだお兄ちゃんを、妹友ちゃんの愛を受けとめたその夜にあたしの体を弄んだひどい男のことを、あたしの実のお兄ちゃんのことをまだ男性として好きなのだ。
「俺さ。今でもおまえが好きなんだぜ、これは本当」
先輩は続けた。
「だけどおまえの一番は兄貴じゃん? 俺最初は二番目でもいいやって思ってた。実の兄貴なんだからおまえらが結ばれるわけねえやって。そのうちおまえも俺のところに来てくれるって」
「おまえ一途だもんな。これ以上そういうおまえを見てる俺のほうが辛くなっちゃってな」
先輩はいつもとはまるで別人のようにあたしに優しい目を向けた。
「だから別れてやるよ。そんでどうしても兄貴との関係がうまく行かなくて、辛くてどうしようもなくなったらまた俺に電話して来い」
先輩は笑った。
「そしたらいつでも、他に女がいてもおまえのところに行ってやるから」
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