過去ログ - 妹の手を握るまで(その2)
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52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/31(火) 22:51:43.53 ID:St0G50lio
翌朝、あたしは先輩の携帯に電話をかけた。振られた翌日のクリスマスの朝に電話すること自体ためらわれたけど、あたしが思っているとおりならお互いに惹かれつつもあたしの存在で一歩踏み込めない二人をけしかけるには早い方がいいと思ったのだ。何より今日はまだクリスマスだった。

しばらくコール音が続いた後、先輩が電話に出た。

『俺だけど、妹か?』

「うん。おはよう先輩」
あたしは明るい声を出すように努めた。

「ごめんね、朝からいきなり電話しちゃって」

『どうかしたか? まさかもう俺に相談したいことができちゃったのか』
先輩は笑った。昨日会ったばかりなのにその笑い声はひどく懐かしく感じられた。

「違うよ」
あたしもつられるように笑った。

「まさか昨日の今日で先輩に泣きついたりしないって」

『まあそうだよな。で、どうした?』
先輩はのんびりした口調で言った。

「昨日の夜途中になっちゃた話なんだけど」
あたしは妹友ちゃんの電話で中断された会話を思い出しながら言った。

回想

「先輩?」

「うん」

「先輩、委員長ちゃんのことどう思う?」

「委員長? どうって言われても」

回想終了

先輩はあの時戸惑っている様子だったけど、先輩が委員長ちゃんのことが気になっているのは間違いないとあたしは考えていた。

「委員長ちゃんが先輩のこと好きなの知ってる?」
あたしはストレートに聞くことにした。

先輩は黙ってしまった。

「考えたんだけど、あたし先輩と付き合って委員長ちゃんの恋を邪魔してたんだよね。それで昨日あたし先輩と別れたじゃん?」
相変わらず電話の向こうでは先輩は黙っていたけど、あたしは構わず話を続けた。

「でね、先輩もきっと委員長ちゃんのことが気になってると思うから・・・・・・」

『おまえさ』
突然先輩の低い声があたしの話しに割り込んだ。

『いったい何のつもり?』
それはさっきまでの優しい先輩の声とはうって変った声だった。取り巻きに囲まれている時の怒鳴り声でもなく、静かに低く話すその声はあたしが初めて聞くものだった。

『おまえが俺から解放されて心が軽くなってるのはわかるけどよ』
もともとそのために別れようと思ったんだから、と先輩は話を続けた。

『でも俺のことを哀れんで余計なことを考えるのは止めてくれ』

「ち、違うよ」
あたしは必死に弁解した。あたしの心は軽いどころか重苦しく沈んでいたのだから。

『委員長の気持ちを自分の罪悪感をを軽くするために利用するな。たとえおまえが本当に俺のことを考えてくれたんだとしてもだ』
先輩の口調は静かだったけどその奥の部分に深い怒りとか悲しみのようなものが感じられた。

あたしは沈黙した。

『あいつの気持ちなんか最初からわかってるよ』
先輩が続けた。

『でも俺が好きだったのはおまえなんだよ。今でも一番好きなのはあいつじゃなくておまえなんだよ』

あたしは携帯を握り締めたまま凍りついた。

『そのことで俺はあいつに罪悪感を感じてたんだ。ずっと前から』

だからよ、先輩は話をまとめた。

『あいつと俺のことは放っておいてくれ。おまえは兄貴のことだけ考えてろ。そのために俺はおまえを諦めたんだから』
そう言って先輩は一方的に電話を切った。


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