過去ログ - 女神
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878:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/11(金) 21:53:22.51 ID:ZNdUCQ6Mo
「先輩、お姉ちゃんとは親しいの?」
 妹は予想外の方に話を進めた。

「特に親しいというわけでは・・・・・・生徒会で一緒だからよく話はするけど」
 妹は僕が幼馴染さんに告白して振られたことを知っているのだろうか。小学生の頃からの知り合いで、副会長の言うように最近まで毎日一緒に登校する間柄なら、僕なんかに告白されて困惑した幼馴染さんが妹に相談したとしても不思議はない。でもそれは確実な話ではなかったから、
とりあえず僕は無難な返事をしたのだった。


「そうか。じゃあお姉ちゃんは何も言わなかったかもしれないけど―――先輩、あたしお兄ちゃんのことが大好きなんです」

 幼馴染さんからは妹の話は聞いたことがないのは確かだったけれど、妹の極度のブラコンぶりについては副会長から聞いたことがあったから、そのこと自体には僕は驚かなかった。ただ、どうしてそんなことをわざわざ僕に話すのだろうという疑問は感じた。妹は女と兄君との付き合いに不満を感じているのだろうか。

「あたし昔からお兄ちゃんが好きで、今まで何度も男の子に告白されてもいつもお兄ちゃんと比べちゃって」
 妹は続けた。

「あたしももう高校生なんだし、実のお兄ちゃんと恋人同士になれるわけなんてないってわかってるんだけど」
 もうか弱い少女の振りをする余裕は彼女にはないようだった。この告白は嘘ではない。そう直感した僕はいろいろと混乱している自分の心を静めて、クライアントの話に没頭する姿勢になった。過去の経験が生きていたのか僕はそれを自然に傾聴する体勢に移行することができたのだった。

「続けて」
 僕は彼女の目を見ながら言った。

「お姉ちゃんが昔からお兄ちゃんのことが好きだったことは知っていたの。そしてお姉ちゃんがあたしのお兄ちゃんに対する気持ちを知っていて自分の気持を無理に抑えていたことも」
 妹は冷静に話を続けていたようだったけど、テーブルの下で握り締めていた手の震えが彼女の装った冷静さを裏切っていた。

「君は幼馴染さんのことが大好きなんだね」
 僕は穏やかに口を挟んだ。

「・・・・・・うん。お姉ちゃんは昔からあたしのことを気にしてくれて、うちは昔から両親の仕事が忙しくて普段家にはいなかったんで、お兄ちゃんとお姉ちゃんがあたしの両親のようだった」

「君はいいお兄さんといい幼馴染のお姉さんに恵まれたんだね」
 僕は彼女に話をあわせた。彼女はそうやってこの二人に甘やかされ守られて成長してきたのだろう。

「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんには本当に感謝してる。でも・・・・・・そんなお姉ちゃんにあたしは辛い想いをさせてたんだなって思ったら、お姉ちゃんに申し訳なくて」

「それで君はどうしたいの」

「どうしたいというか、この間お姉ちゃんに言ったの。もう自分に正直に素直になってって。あたしのことはもう気にしないでって」

「君はそれでよかったの?」
 ブラコンという言葉では言い表せないほど兄君に依存してきた彼女にとってはそれは思い切った、辛い選択だったろう。

「うん。あたしもそろそろお兄ちゃんを卒業しなきゃって思った。今でも一番好きなのはお兄ちゃんだけど、あたしがお兄ちゃんと結ばれることなんてなんだから、それなら二番目に好きなお姉ちゃんにお兄ちゃんの恋人になってほしいって」


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