過去ログ - 女神
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907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/15(火) 23:28:33.13 ID:Bk01SXm7o
 その日の放課後、僕は生徒会室に顔を出した。時間が早すぎたせいで室内には副会長と幼馴染さんが何やら雑談しているだけで、他に役員の姿は見当たらなかった。二人の会話を邪魔することに少し気が引けたけど、僕は急いでいたので副会長に話しかけ必要な指示を彼女に伝えた。それだけ済ませて僕が部屋を出ようとすると副会長はあからさまに不服そうな顔をした。そして僕に向かって何かを話そうとしたけど幼馴染さんのことを気にしたのか、結局彼女は何も言わなかった。

 そのことにほっとして僕が生徒会室を出ようとした時だった。それまで黙って僕と副会長のやりとりを聞いていた幼馴染さんが口を開いた。

「あの、先輩」
 それは副会長ではなく僕にかけられた言葉だった。

「うん―――どうしたの」

「先輩、最近生徒会にいないでパソコン部の方にばっかりかかりきりになってますけど・・・・・・ひょっとしてあたしのせいですか」
 幼馴染さんは思い詰めたような表情で言った。

「君のせいって・・・・・・何でそうなるんだよ。こんな時期だけどパソ部に新入部員が入ってきたから指導しないといけないだけだよ」
 僕はどぎまぎして答えた。いったい幼馴染さんは急に何を言い出したんだろう。しかも副会長が聞いているところで。

「でも先輩、あのことがあってから学祭の準備に加わらないし、あたしのことも避けてるみたいだし」

「だからそうじゃないって」

「あの・・・・・・生徒会には先輩は必要な人ですし、先輩が気になるならあたしが役員を辞めても。先輩の態度が変になっているのはあたしの責任だし」

 何を言っているのだ―――この上から目線の勘違い女は。僕はその時彼女を憎んだ。彼女は、僕が彼女に振られたために彼女を避けて卑屈な行動を取っているのだと断定し、それなら僕を振った自分が身を引くというご立派なことを提案しているのだった。

 僕をコケにするのもいい加減にしろ。

 僕はこの時幼馴染さんをというより、幼馴染さんや兄友君に代表されるような他者から好意を持たれて当然と考えている類いの人種に激しい憎悪を抱いた。幼馴染さんは自分が僕にとって高嶺の花だということを前提に、その高嶺の花である自分が僕のようなゴミと付き合えるわけはないけど、それでもそのことによって僕を傷つけたことをすまないと思っているということを言っているのだった。

 それは、自分は優しい女だから例え自分にとってゴミクズのような男を振ったとしても、そのことに対してきちんと罪悪感を感じられる優しさを持っているのだとアピールしているのと同じだった。



「あんたさあ、ガキみたいに拗ねるのはいい加減に止めなよ」
 それまで黙っていた副会長までそこで口を挟んだ。「いつまでも振られて傷付いた自分をアピールされると本気でうざいんだけど。会長の癖に下級生に心配させてどうすんのよ。しかも、あんたの方が幼馴染さんに告って始めたことでしょうが」

 幼馴染さんへの憎悪を募らせていた僕に対して副会長は説教するように言った。そうじゃないのに。僕はもう反論する気すら失って、この場の雰囲気が自分にとって想定外の流れになったことに忸怩たる想いを抱いた。

「前にも言ったけど誰だって振られることなんかあるんだし、あんただってそんなことは承知でこの子に告ったんでしょ。別に失恋とかは全然恥かしいことじゃないけど、失恋したことに拗ねて構ってちゃんやってるあんたの姿は正直痛いよ」

「副会長先輩、もういいんです。悪いのはあたしだし」
 幼馴染さんが副会長の話に割り込んだ。

「あんたも会長を甘やかすのやめなよ。あんたが役員を辞める必要なんて全然ないよ」
 副会長は今度は矛先を幼馴染さんに向けた。

 僕はもうこれ以上、この場の雰囲気に耐えられなかった。


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