過去ログ - 女神
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943:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/05/18(金) 23:29:48.82 ID:yfasADApo
 そうして僕が副会長に謝ろうとしたその時、僕の片腕は誰かに抱きつかれ急に重くなった。僕はいきなり抱きついてきた妹に気がつき言葉を中断した。そして、僕を更に責めたてようと意気込んでいたらしい副会長も驚いたように黙ってしまった。

「先輩は何も悪くないです」
 妹は僕の左腕に自分の両手を絡ませながら、おそらく面識もないであろう副会長を睨んでそう言った。

「あんたは」
 副会長が言った。面識はないかもしれないけど、校内の男女関係の噂が好きな彼女は妹のことは知っていたようだった。

「たしか、幼馴染さんの知り合いの妹さんだっけ」

 妹はそれには答えなかった。

「先輩は悪くないです。あたしがパソ部に入部して、それで何もわからないでいることを心配してくれて面倒見てくれてるだけで」

「・・・・・・」
 副会長はとりあえず僕への悪口を中断し、むしろ当惑したように僕の方を見た。副会長には、僕の腕に抱き付きながら自分を睨んでいる妹の姿が映っているはずだった。

「あんたさ・・・・・・」
 副会長はとりえず妹を相手にせず僕に向かって吐き捨てるように言った。

「やっぱり女を乗り換えてたのか。幼馴染さんに振られたからって、すぐに下級生に言い寄るとか最低だね」

 僕はそれに対して何も言い訳できなかった。本当は幼馴染さんなんて好きじゃなかった。女と兄君と幼馴染さんとの関係を知りたいために、僕は幼馴染さんに告白する演技をしたのだ。でもそれを告白すれば僕はもっと最低の人間として認識されてしまう。そして、どんなに否定しよう
が僕は妹に惹かれてしまったことも事実なのだった。

 僕はその時はもう、硬直していて何も言い訳できる状態ではなかった。妹にまで僕が幼馴染に告白したことを知られてしまった。僕は、僕の腕に抱き付いている妹がこの時どんな表情をしていたのか確認する勇気すらなかった。

「言い訳もなし? あんたいっそもう生徒会長やめたら?」
 副会長は妙に落ち着いた声で僕に言った。こいつがこういう声を出すときは本当に怒っている時なのだ。これまでの生徒会での付き合いで僕はそのことを知っていた。

 どちらにしても、もう僕には副会長に言い訳できなかった。生徒会長であることとパソコン部の部長であることだけが、中学時代と違って無冠では全く人気のない僕の唯一の拠りどころだったのに、それさえ僕は失おうとしていたのだった。


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