95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/02/16(木) 23:01:51.06 ID:stVjAS9Vo
その日、女は俺と並んで駅の方に向かいながら俺に聞かれたことには普通に答えてくれた。俺は女が普段何を考えていて、何を楽しみに暮らしているのかと言うことが知りたかったのだけど、とりあえず当たり障りのないことから質問してみようと思った。それは知り合ったばかりで互いに関心を持っている男女が探り合うように質問しあうようなことだったけど、女は俺については既に知り過ぎるくらいのインサイダー情報を持っているようだった。何でこいつが幼馴染の気持ちとかを自信を持って語れるのかはまだよくわからなかったけど。
「あのさあ、おまえって兄弟いるの」
俺は無難な上にも無難な質問をぶつけてみた。
「一人っ子だよ」
女はあっさりと答えた。そして俺の方を見て、にっていう感じの笑いを浮かべて俺の質問を待つまでもなく自分についての情報を自ら開示してくれた。
「あと、お父さんは普通の会社員で、お母さんも普通の会社員。つまり共働きね。だからあたしはいつもは学校でも家でもぼっちなんだよ」
女は平然とそう言って笑った。そして、俺の目を見て続けた。
「あたしのことなんか本当に知りたいの?」
俺はそれ以上自分から質問をする気を失って女の言葉をただ聞いていた。
「兄君が知りたいなら別に隠すことなんかないしね」
俺の返事なんかもとから期待していなかったように彼女は話を続けた。何で俺が一言だけ女のプライベートに踏み込んだ質問をしただけで、こんなにこいつは食いついて嬉々として語りだすのだろう。俺は疑問に感じたけど、謎めいたこいつのことが知りたいという気持ちが先に立っていたため俺は女の話を遮らずに聞いていた。
「これでも中学の頃は親友もいたし、信じないかもしれないけど告られて付き合った彼氏もいたんだよ」
女は言った。
「でも、この高校に入った時にクラスに同じ中学出身の子がいなくてさ。何となくぼうっとしてたら周りはもうグループが出来ちゃってて、気づいたらぼっちになっちゃってた」
それも変な話だなと俺は思った。こいつくらい外見が良くてコミュ力もあれば友だちが出来ない方が不思議だった。むしろ近づいてくるクラスメートを拒否してたんじゃねえのか。
「あはは」
女は笑った。
「自分から周りを拒否してるんじゃないのかとか思ってるんでしょ」
女は言った。
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