12: ◆JbHnh76luM[saga]
2012/02/03(金) 10:23:40.95 ID:ui263o5To
「まぁまぁだな」
開口一番の教官からの言葉はこれだけだった。
「シェル、なぜあそこでエルマーを見捨てて目標の救出をしなかった?」
「仲間を見捨てるわけにはいきません」
シェルが毅然と言い返すと、教官は「ふむ」とうなずいてから、
「エルマー、戦闘が荒い。シェルにも言えるが、もっと考えて行動しろ」
「はい」
しばらくお説教を受けて、解放された時には次の組が洞穴に入っていた。
「そういえばシェル」
「ん?」
食堂で遅めの昼食を食べていると、エルマーがシェルに問い掛けてきた。
「朱いライノクラフトの時、何か勝算あったのか?」
「うーん、勝算っていうか、あのライノクラフト、ほとんど動かなかったんだよ」
「動かなかった?」
フォークに肉を刺したままシェルは説明をする。
「あの騎体、戦闘が始まってからもほとんど動いてないんだよ。色々ゆさぶってみたんだけど、旋回はするんだけど、自分から動くって言うのがほとんどなかったんだ。だから、何らかの理由で動けないのかな、って思ってさ」
「それであんな攻撃の仕方したのか」
「うん」
シェルの無茶とも言える行動に半ば呆れているエルマーの背後に人影が現れた。
「ほんっと、やられたわ」
少女(とは言ってもシェルより年上だが)がシェルの前、エルマーの背後に立った。少女はライダーの様で、朱を基調にしたライダースーツに身を包んでいた。その少女の横にはもう一人少女が笑顔を浮かべて立っていた。
「あれ?さっきの目標だった……」
エルマーが驚いた表情で聞くと、少女はこくり、とうなずいて「お疲れ様」と言ってからシェルを見て、
「大きくなったわね、本当に」
「え?」
理解するまでに、思い出すまでに一瞬の間が必要だった。そして、そのきっかけとなったのは、この二人の容姿だ。
瓜二つなのだ。顔の造詣が。ただ違うのが髪型で、片方はショートカットで、片方は腰にまで届こうかというロング。その色は朱に近い赤で、二人ともシェルを懐かしむように見ていた。
「あ……」
シェルの脳裏に閃くものが走る。ナイティム『ブルー・エッジ』での記憶。父親の最後の時、シェルを避難させようと呼びに来た双子の姿を。
「沙夜香姉ちゃんに、魔夜香姉ちゃん?」
思い出した。当時ライダー候補生だった双子だ。シェルが9歳の時にナイティムに入団し、ライダー資格を取るまではライダー候補生として働いていた、あの双子だ。動の魔夜香と静の沙夜香。その実力は当時の時点で折り紙つきで、非公式に操縦したライノクラフトの模擬戦では2機で3機のライノクラフトを倒していた。
「元気だった?」
沙夜香が優しい声でシェルの頭をなでる。こくこくとうなずくシェル。
「立派なライダー候補になっちゃって」
魔夜香がシェルのおでこをピン、と弾く。
「おいおい、知り合いなのか?」
我慢しきれなくなったエルマーがシェルに尋ねる。問われたシェルは双子をエルマーに紹介する。
「シェルがお世話になってます。エルマー君ね? 君の操縦、見せてもらったわ。ちょっと暴走気味の所があるけど、成長が楽しみだわ」
指摘に顔を真っ赤にしながらエルマーも挨拶する。
『エルマー候補生、至急教官室まで』
99Res/116.45 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。