16: ◆JbHnh76luM[saga]
2012/02/03(金) 10:29:41.16 ID:ui263o5To
「では、発表する。合格者の名前を読み上げるので呼ばれた者は返事をしてから別室で待機しろ」
一瞬の間。しかしそれはシェル達にとっては果てしなく長い時間に思える。
「エルマー=ブラフォード」
「……」
一番最初に呼ばれたのはシェルの隣に立つ親友、エルマーだった。が、当の本人はまだ理解できていないらしく、口を開けたまま立っているだけだった。
「エルマー、エルマーってば」
シェルが肘で彼の脇腹を小突くと、
「ははは、はいっ! はいっ!!」
やっと正気に返った。同時に飛び上がって「やっほーーーっ!!」と飛び上がり、教官の手を取っていきなり踊り始める。
「やったぜ! 合格だ! 合格したんだ!」
その喜びようはものすごく、今にも教官の禿げ頭にキスをしそうな程だったのだが……
「いい加減にしろっ!」
教官の雷が落ちた。雷だけではなく手も落ちたのだが。
「っ痛ぁぁぁ……」
「さっさと行かんか!」
追い立てられるように別室に向かうエルマー。部屋を出る直前、彼は振り向いて、
「みんな、向こうの部屋で待ってるからな! きっと来いよ!」
2年間、共に寝食を、辛い訓練をしてきた友達にそう言い残してエルマーは部屋を出た。
「ったく……では、次だ。ジョナサン=フィーリー」
「はいっ!」
肌の黒いジョナサンが嬉しさを身体の内で爆発させながら部屋を出る。扉が閉まった瞬間、「ぃやっほーーっ!!」というくぐもった叫び声が聞こえる。溜息を吐く教官。「ったく、精神面での成長が見られん」
「次、ファリア=カーター」
「は、はいっ!」
多数いた訓練生の中、ふるい落とされ続けて消えていった女性候補の唯一の生き残りであるファリアが驚いたように裏声になって返事をする。
「えっと……」
エルマーと同じく、もう一つ現状を理解できていない。
「何をしている。合格だ。行け」
「は、はいっ」
明らかに浮き足立っている。足が地面についていない状態だ。
「次が最後だ」
残った3人が互いの顔を見合わせる。互いに辛い訓練を乗り越えてきた仲間であり、良きライバルでもあった。それぞれ不安そうに視線を交わしている。
「シェル=ブルーエッジ」
この瞬間、シェルはエルマーやファリアの気持ちがわかった。頭では理解してるのだが、現実味が足りないのだ。合格した、という現実に心がついてこない。
「シェル! 返事は!?」
「はいっ!」
やっと返事が出来た。が、身体が動かない。まるで金縛りにあっている様に身体が全く動かないのだ。
「お前はここに残っていていい。二人は俺についてこい」
肩を落としている不合格者2人はシェルに「おめでとう」「がんばれよ」と声を掛けて部屋を出た。
「え……?」
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