18: ◆JbHnh76luM[saga]
2012/02/03(金) 10:32:43.58 ID:ui263o5To
「ちがうのよ、シェル」
肩をがっくりと落とすシェルの肩に魔夜香が手を置く。沙夜香もシェルの頭に優しく手を置いて「早まらないで」と答える。バドルーンは依然として机と熱い抱擁を続けていた。
「貴方の成績は上位だったわよ」
「え?」
「戦闘時の判断力、行動力、仲間を見捨てない優しさ、確かに沙夜香を降ろしてしまったことは減点対象だけど、十分に距離を取った事とエルマー君を護衛にちゃんと付けた所で減点はそんなに大きくなかったわ」
「じゃあ、なんで僕はここに?」
その問いに魔夜香は笑顔でうなずき、まだ寝ているバドルーンに手近にあった水をかけてたたき起こす。
「ん? 魔夜香! こんな時間に俺の寝所に……」
「いいから話続けなきゃだめでしょ」
起きた瞬間から盛り上がるバドルーンに氷の如き冷たい対応を見せる。そしてシェルの方に笑顔で振り向いて、
「じゃあ、続けるわね」
「あー、その話までいってるのか。了解了解」
納得したらしいバドルーンが服装を正す。見れば双子も服装を正していた。ちなみに3人の着ている服はライダースーツの上に揃いのジャンパーを着ていた。ジャンパーの背中部分には竹をあしらったエンブレムと『RestPlace』という刺繍が施されていた。
「シェル、俺達が所属してるナイティムに来ないか?」
バドルーンが3人を代表して口を開いた。
「ナイティムに?」
「そうよ。何かしたい事を決めてるんだったら無理強いはできないけど……」
そう言われてシェルは何も考えていない事に気づいた。父親に一歩でも近づく為にライダーになったのだが、それからどうすればいいか、全く考えていなかったのだ。父親に近づく為にはこれからどうしたらいいのか、シェルの頭の中では真っ白の状態であった。
「軍に所属するのも確かに勉強になると思うけど、お父様と同じようにナイティムとして生きるのも一つの方法だと思うよ?」
この沙夜香の言葉でシェルの気持ちが決まった。父親と同じ道を生きるという事を。
「……うん。じゃあお願いしてもいいかな?」
「よしっ、話が早い! 俺は早速マスターに連絡してくる!」
バドルーンが部屋を出て連絡をとりに行く。双子は嬉しそうに手を合わせて喜んでいた。
「よかったぁ。ドキドキしてたよ。もし断られたらどうしようかと思ってた」
同時に二人ともシェルに抱きつく。というよりシェルを抱きしめる。
「また一緒に冒険できるね!」
双子も、バドルーンもナイティム【ブルー・エッジ】に居たのだ。当時は双子とバドルーンは候補生、シェルはまだそこまでもいっていない状態であったのだが、今、4人はれっきとしたライダーとして正式な仲間となったのだ。
「それで、お姉ちゃん達が所属しているナイティムってどんな所なの?」
「マスターは厳しいけどいい人よ。ナイティムのレベルも中の上くらいだけど、スタッフのみんなもいい人ばかりで居心地がいい場所ね」
そう答える魔夜香の横で沙夜香もうなずいている。二人のその笑顔にはどこか『含む』ところがあるらしく、ニヤついていると言っても語弊がなさそうでもあった。
「連絡ついたぞ。ってお前達、シェルにべたべたするんだったら俺がしてやるっ!!」
部屋に戻ってきたバドルーンが飛びかかろうとするが、再び魔夜香の放った椅子によって撃沈された。
「ほんっとに懲りない奴ね」
「あはは……」
苦笑するしかなかった。
バドルーンの話だとバラン・バランの街でナイティム【レストプレース】はシェル達を待っているということであった。
それから4人でナイティムの事や昔の話に華を咲かせ、深夜まで小さなお祝いは続いていた。
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