16:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 16:19:08.58 ID:A45p+aH70
 カサリ、という音がして。物言わぬ死体と化した彼の口が動いた。殆どミイラ。骨と皮のその口から、握り拳大の、手の平のような足をした黒光りする背中を見せた昆虫が這い出してくる。 
 それは次から次へと……何処にそんなに隠れていたのかというくらい、雪崩のようにミイラ死体の口から溢れ出てきた。 
 それは、二人の姉の死体からも同様だった。 
 蟲……蟲。 
 黒い……おぞましいそれは、愛寡の足を噛み、腕を噛み。耳に足を突っ込み……口から体の中に入ろうと足を動かし。 
 その体をたちまちの内に覆い隠し、蹂躙し始めた。 
 まるでそれらが一つの意思を持っているように。 
 それらが、あざ笑うかのように。 
 蟲に取り付かれた顔。その視線の先で、地面がモゴモゴと動いていた。 
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