227:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:13:27.68 ID:87ru5DuQ0
ゼマルディは発しかけていた滓のようなドス黒いものを、必死に喉の奥に飲み込んだ。そして何度か深呼吸をし、コップに入っている赤い花に目をやる。
――捨てるだけだ。
そう、捨てるだけ。
すぐ捨ててすぐ帰ってくればいい。
それだけだ。それだけ。
自分に言い聞かせ、カランの顔を見る。憔悴した彼女の顔。いわれなき心への暴力と、そしてルケンによる圧迫。こんなことを彼女は十七年間も耐え続けてきたのか。
心に湧き上がったのは、九割の恐怖と一割の怒りだった。
そして勝ったのは、怒りの方だった。
また大きく深呼吸をして立ち上がる。そしてゼマルディはカランに背を向け……白い壁にもぐりこむようにして、消えた。
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