73:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/08(水) 17:03:04.75 ID:A45p+aH70
(いっけねぇ……)
別に、その女達に対しての感情など何も湧かなかった。だが、爪の心にあったのは、今しがた誰とも分からない侵入者を叩き殺したことでも、命令を無視して勝手に行動していたことに対して教会から処分が下るだろうということに対する懸念でさえなかった。
脳裏に、ぎこちなく微笑んでいた華奢な師のことが浮かび上がる。
――不味い。
俺がこんなことをしたと知ったら、あの人は悲しんでしまう。とても……とても、悲しんでしまうかもしれない。
――それだけは避けなければ。
――それだけは、いけない……。
爪は、瓦礫に足を挟まれて動けなくなっていた女性に近づき、その頭の上にしゃがみこんだ。血まみれでズルズルの顔で近づいてきた彼を見て、金切り声を上げて後ずさろうとしている。
それを無機質な、ゴキブリでも見るかのように見下ろして……爪は、軽く彼女の頬を掌で張った。
979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。