過去ログ - カゲロウデイズ
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2:まっちゃ
2012/02/08(水) 21:35:41.72 ID:nClwSbzn0
それは、とてもむし暑い夏の日のことだった。

取り出した携帯電話に目をやれば
画面には 『8月15日(日曜日) 12:28』 とある。

ふっと視線を上にあげると、天気はよく、太陽がギラギラと照りつけていた。 

このままでは病気になってしまうのではないか――
眩しい日差しのなか、ボンヤリとそんなことを考えていると横から声がとんできた。


「ねぇ、ワタシの話ちゃんと聞いてる?」


頬をふくれさせながらこちらに視線を向けてくるのは、クラスメイトの一人であり、幼馴染である少女だ。
肩にかかるくらいの長さに綺麗に整えられた黒髪が、風で涼しげにサラサラと靡いている。

ムスっとしていても崩れることのない容姿。第一印象を聞かれれば、カワイイと言う者が多いだろう。

そんな子となぜ二人きりでいるのかといえば、特別な理由はない。

今は夏休み真っ最中である。
大抵の子供なら、友達や家族と出かけたり、祭りやら海にも行くだろう。
ただ、自分にはソレをしたいという願望がない。

昔から両親は仕事が忙しく、現在も二人揃って出張中だ。

決して、愛されていないわけではない。
家族で一緒の時間が作れないことを申し訳なく思ってくれているし
仕事だってなるべく早く切り上げて帰ってきてくれる。

それに気付かないほど自分はもう子供ではないし、
そこまでしてくれている両親に文句を言うのは心が痛む。

泣いて我儘ばかり言う時期は既に終わった。

それは隣に座っている少女も同じことだった。
だからだろうか。お互いに通じ合う箇所が幾つもあった。

今日だって、特にする事もなかったからという理由で呼んだ。
それで来てくれるということは、どうやら向こうも自分と同じだったらしい。


「あぁ、ゴメンゴメン。」


いまだ不機嫌そうな彼女に、慌てて謝罪をいれる。
すると、それで満足したのか、さっきまでと同じように笑顔で話し始めた。
ただ、その話がどんな内容だったかは覚えていない。


―――ええと、なんの話だったかな・・・


少女の話に耳を傾けながら必死に思い出そうとするが、結果は同じだった。
こんなに暑い日なのだから、ボーッとしていることは仕方ない、と適当に理由をつけておく。


「でもまぁ、夏は嫌いかな・・・」


膝に座らせた猫を撫でながら、少女はふてぶてしく呟いた。
少年ががきょとんとした表情を見せると、まるで悪戯が成功したときのようにニコッと微笑まれた。

そんな見ていて微笑ましいやり取も、夏にとっては全く関係ない。
心なしか、さっきよりも気温が上がったような気がする。
このままでは本当に倒れてしまうと感じ、どちらかの家に行くことに決まった。
ベタといえばベタだが、幸い家も隣同士だ。あまり時間もかからないだろう。


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