24:まっちゃ
2012/03/17(土) 20:45:24.68 ID:GDHeR6hE0
「嘘」ではなく『夢』。
これは悪夢に違いない、少年はそう思った。だから今の自分は幻想で、現実の自分はきっと悪夢に魘されていることだろう。
何があったのだろうか?少年は他人事のように考える。
もしかしたら怖いテレビかマンガでも見たのかもしれない。もしかしたら嫌なことでもあったのかもしれない。
理由がなんであれ夢ならば最後は必ず目覚めるはずだ。そう考えると気が楽になってきた。
脳内でも目の前の現実は「夢」だと判断し、自然と処理を進めてくれていた。
さっきまで五月蠅かった蝉の音が今は不思議とそう感じない。ふ、と視線を下に落とせば赤が自分の足もとまで浸食していた。
しかしこれも「夢」だと分かってしまえばどうとも思わなくなった。
朝がくれば必ず目覚める。そして、また少女の笑顔を見ることができる。それが少年のいた『日常』。
ならこんな幻想に怯える必要なんてない。苦しむ必要なんてない。理解する必要もない。
だんだんと意識が遠のいていく。まるで深い泥の中に沈んでいくような、そんな感覚。
だが、少年にはそれが不快に感じられなかった。寧ろどこか清々しい気分だ。
きっともうすぐ目覚めるのだろう、少年は悟る。
ゆっくりと目を閉じながら「寝る前は怖いものは見ないようにしよう」なんて考える自分に小さく笑って
波の流れに任せるように身体から力を抜いた。
―――その瞬間。
「 夢じゃないぞ 」
耳元で歌うように、楽しげな、そんな声が聞こえてきた。
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