29:まっちゃ
2012/04/27(金) 16:53:15.60 ID:ExxrO5Ul0
全身から血の気が引くのを感じた。暑さのせいだけではない汗が大量に噴き出る。
軽かった身体が今は全身に隙間なく泥を詰め込んだように重い。
意識が朦朧としていくのが分かった。のぼせたように頭がボーッとする。
トンッ、と
目の前の自分に軽く胸を押された。
そんな小さな衝撃に耐えることもできず、抵抗することなく重力に従って倒れていく。
ほんの数秒のことだったのだろう。しかし少年にはそれがゆっくりとした動きに思えた。
視界が眩みほとんど黒に塗りつぶされたなか、首をチラと横に振る。
そこには先ほどと寸分も変わらない真っ赤に染まった少女がいた。
細く華奢な身体には何本もの鉄柱が突き刺さっている。
――しかし
その見るからに悲惨な姿とは全く逆に
少女の横顔は僅かに口角が上がっていた。
少年にはそれが、
笑っているように見えた
……気がした。
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